ファイル編集手順マニュアル:1 入稿原稿のチェックの(3)特殊表記のチェックの(i)ワープロのルビ(ふりがな)は危険きわまりないシロモノ[手順3]

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 世の中にはワープロソフトが入力ソフトの究極のツールだと思いこんでいるひとが多い。テキストエディタなどは存在も知らないか、知っていてもワープロより制限の多い、低級なツールだと思っているひとがほとんどではないか。たしかにWindowsに付属している「メモ帳」などをテキストエディタだと思っていれば、たいしたソフトではないと勘違いすることもありうるだろう。またテキストエディタはネット上でダウンロードして使えるシェアウェアまたはフリーウェアが一般的なので、市販ソフトに比べて安価(または無料)なので質もそれだけ落ちるとシロウトは考えがちである。
 ところがどっこい、いわゆる高機能エディタと呼ばれる多くのテキストエディタは、ワープロのような印刷機能や修飾機能に必要以上に力を入れているツールよりもテキスト入力とテキスト編集に特化したプロ用のツールなのであり、ワープロなどではろくに装備もされていない、テキスト処理に必要な「(タグ付き)正規表現」に完全に対応できるものが多いのである。これが使えないと、編集処理などには使い物にならない。ワープロがせいぜい中間発表レベルの印刷用ソフトと言われるゆえんなのである。
 ここではなぜかデファクト・スタンダードと思われているMicrosoft Wordのもつ大きな欠陥についてとくに注意しておこう。そのうちのひとつにルビの問題がある。そもそもルビ処理というのはワープロソフトそれぞれのローカルな機能であり、アプリケーションの外ではまったく通用しないルールにもとづいている。端的に言えば、Wordでできたデータをテキストファイル化しようとすると、ルビの文字はおろか親文字ごと消失してしまうというとんでもない不出来なソフトなのだ。無理もない、ルビなどという概念を知らないアメリカ人が作っているソフトだからであろうか。たとえば、Word上で「パソコンは英語という言語帝国主義【インペリアリズム】の支配する世界であって、日本語のような限定された【ローカルな】言語は二次的な言語と見なされる」という文章があるとしよう(【】内はルビ)。これをWordからテキストファイル化すると、「パソコンは英語という言語の支配する世界であって、日本語のような言語は二次的な言語と見なされる」となってしまって帝国主義【インペリアリズム】、限定された【ローカルな】というニュアンスが全部とんでしまう。もっとひどい例は「ランボーは『見者【ヴォワイヤン】』である」とか、同じくランボーの「絶対的に現代的【モデルヌ】でなければならない」といった有名なフレーズは「ランボーは『』である」「絶対的にでなければならない」というふうになんのことだかわからなくなってしまう。
 そこでどう対応するか。この場合には、テキスト保存するまえに、Word上でファイルの画面修正をおこなうか、Wordファイルを印刷しておいて、テキスト保存したデータにルビ文字を再入力するしかない。この作業は自動化するわけにはいかないので、ここは我慢してもらうしかないのである。
 ルビ指定は印刷所との約束でどうやってもいいが、印刷所の編集機で自動処理できるようにするためにはタグ付けが必要である。
 わたしの指定方式は、_^親文字【ルビ文字】^_というのが基本である。なお、親文字とルビ文字は原則的に1対2であるが、この比率ですべてのルビが振られているわけではない。親文字に対してルビ文字が長い場合(外国語にルビを振るような場合によくある。たとえば、英語:イングリッシュ、など)もあれば、逆に親文字に対してルビ文字が短い場合(たとえば、場合:ケース、など)、さらに言えば、日本語のふりがなが親文字と微妙にずれてしまう場合などもあり、ルビ問題はたんにWordの不備の問題だけでない、日本語の技術処理上の大きな問題である。
 くわしくはこの問題を論じた『出版のためのテキスト実践技法/総集篇』「II-6 ルビのふりかたを正確に指定する」を参照していただきたいが、要は、ルビ付き文字をいかに合理的かつきれいに見せるか、という問題なのである。日本語においては重要な課題なので、的確な対処が望まれる。

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このページは、未来社が2013年3月 9日 21:43に書いたブログ記事です。

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