17 オフィスはもういらない:OpenOffice.org

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 いまやパソコンにとって必需品であるかのような統合ソフトMicrosoft Office(*)だが、いつぞやのWindowsとの抱合せ販売への独禁法違反訴訟以来、Windowsパソコンを買うと当然のようにOfficeが付いてくるということは原則的になくなった。マイクロソフトはパソコンのハードメーカーにたいし基本ソフトのWindowsを提供する交換条件としてOfficeの搭載を押しつけることによって、その主要な部品であるMicrosoft WordやMicrosoft Excelがワープロソフトと表計算ソフトの定番にのし上がることに成功したのである。同じことはブラウザソフトであるInternet Explorerがそれまでの定番ブラウザであったNetscape Navigatorを押しのけていった戦略とも見合うものである。(**)
 この戦略は、ある時点でMacintoshがマイクロソフトと資本提携することを余儀なくされMicrosoft OfficeがMacintosh上でも互換性をもつようになったときに、Officeがパソコン市場を制覇したようなかたちになり、和製ワープロの一太郎や表計算ソフトの定番ロータス1-2-3を脇に押しやるようになった。書き手や研究者の多くがWordを世界標準のように思いこまされているのを見るにつけ、テキストエディタ至上主義者のわたしとしては非常にくやしい思いをしているのである。
 なぜ、こんな程度の低いワープロソフトが世界標準のように思われているのかと言えば、『出版のためのテキスト実践技法』でこれまで何度も書いてきたように、ワープロソフトは印刷表示機能としていちおう優れた面があるからにすぎないのである。出版のためのテキストデータ作成にとっては意味のないWord作成データが、あたかも入稿用データとして普遍性をもっているかのように思われているのは、受け手側の出版社や印刷所がそれを本来必要なテキストファイルに変換する作業を請け負っているからにほかならない。そういう機能の働かないところでは書き手が設定した印刷機能に応じた範囲で表示~印刷ができるので一定の伝達機能を果たすことができるため便利だというだけの話なのである。出版社や印刷所がそのデータを使いものになるようにするためには、Wordの最新ヴァージョンに対応するヴァージョンアップを強いられることになる。しかもOfficeはかなり強気の商売のため高価なソフトであり、しばしばヴァージョンアップをして使い手に無駄な出費を強いるのである。
 こうしたマイクロソフトの商業主義に対抗するために開発されたのが、LINUX系のフリーソフトOpenOffice.org(***)であり、Microsoft Officeにほぼ完全な互換性をもっている。いまやORACLEがバックアップにまわっているこのソフトは頻繁なヴァージョンアップをおこなっており、最新のWord原稿などにも簡単に対応できるようになっている。もちろんこのソフトを使ってワープロソフト機能(OpenOffice.org Writer)、表計算ソフト機能(OpenOffice.org Calc)によって新規のデータ作成、Office用の保存などもできるので、Officeをもたなくても、あるいは旧ヴァージョンしかなくてもなんら不自由しないのである。たとえば、Wordの最新ヴァージョンで作成されたデータは「.docx」という拡張子で表示されるが、これは旧ヴァージョンでは表示できなくてもOpenOffice.orgからは難なく表示~修正~保存をすることができる。
 もうこれからはマイクロソフトの商業主義に煩わされることなく、OpenOffice.orgを採用することを奨めたい。もっともテキストエディタ主義者にとってはしょせん一時的な利用価値しかないのは当然の帰結であることに変りはない。

(*)Microsoft OfficeはワープロソフトWord、表計算ソフトExcel、プレゼンテーションソフトPowerPoint、メールソフトOutlook、データベースソフトAccessその他を一体化した統合ソフトである。
(**)Netscape Navigatorはその後、フリーソフトのMozilla Firefoxとなっていまだに一定程度以上のシェアを保っている。ただ、インターネットバンキングその他の使用にあたってはInternet Explorerしか許容しないという不合理な状況が生まれており、制度的にFirefoxやOperaといったすぐれたブラウザソフトがInternet Explorerの下位に位置づけられているのは反動的というしかない。
(***)このソフトの日本語版のダウンロード先はhttp://ja.openoffice.org/download/で、さまざまな追加機能もダウンロードできる。

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このページは、未来社が2010年7月18日 20:40に書いたブログ記事です。

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