いまやパソコンにとって必需品であるかのような統合ソフトMicrosoft Office(*)だが、いつぞやのWindowsとの抱合せ販売への独禁法違反訴訟以来、Windowsパソコンを買うと当然のようにOfficeが付いてくるということは原則的になくなった。マイクロソフトはパソコンのハードメーカーにたいし基本ソフトのWindowsを提供する交換条件としてOfficeの搭載を押しつけることによって、その主要な部品であるMicrosoft WordやMicrosoft Excelがワープロソフトと表計算ソフトの定番にのし上がることに成功したのである。同じことはブラウザソフトであるInternet Explorerがそれまでの定番ブラウザであったNetscape Navigatorを押しのけていった戦略とも見合うものである。(**)
 この戦略は、ある時点でMacintoshがマイクロソフトと資本提携することを余儀なくされMicrosoft OfficeがMacintosh上でも互換性をもつようになったときに、Officeがパソコン市場を制覇したようなかたちになり、和製ワープロの一太郎や表計算ソフトの定番ロータス1-2-3を脇に押しやるようになった。書き手や研究者の多くがWordを世界標準のように思いこまされているのを見るにつけ、テキストエディタ至上主義者のわたしとしては非常にくやしい思いをしているのである。
 なぜ、こんな程度の低いワープロソフトが世界標準のように思われているのかと言えば、『出版のためのテキスト実践技法』でこれまで何度も書いてきたように、ワープロソフトは印刷表示機能としていちおう優れた面があるからにすぎないのである。出版のためのテキストデータ作成にとっては意味のないWord作成データが、あたかも入稿用データとして普遍性をもっているかのように思われているのは、受け手側の出版社や印刷所がそれを本来必要なテキストファイルに変換する作業を請け負っているからにほかならない。そういう機能の働かないところでは書き手が設定した印刷機能に応じた範囲で表示~印刷ができるので一定の伝達機能を果たすことができるため便利だというだけの話なのである。出版社や印刷所がそのデータを使いものになるようにするためには、Wordの最新ヴァージョンに対応するヴァージョンアップを強いられることになる。しかもOfficeはかなり強気の商売のため高価なソフトであり、しばしばヴァージョンアップをして使い手に無駄な出費を強いるのである。
 こうしたマイクロソフトの商業主義に対抗するために開発されたのが、LINUX系のフリーソフトOpenOffice.org(***)であり、Microsoft Officeにほぼ完全な互換性をもっている。いまやORACLEがバックアップにまわっているこのソフトは頻繁なヴァージョンアップをおこなっており、最新のWord原稿などにも簡単に対応できるようになっている。もちろんこのソフトを使ってワープロソフト機能(OpenOffice.org Writer)、表計算ソフト機能(OpenOffice.org Calc)によって新規のデータ作成、Office用の保存などもできるので、Officeをもたなくても、あるいは旧ヴァージョンしかなくてもなんら不自由しないのである。たとえば、Wordの最新ヴァージョンで作成されたデータは「.docx」という拡張子で表示されるが、これは旧ヴァージョンでは表示できなくてもOpenOffice.orgからは難なく表示~修正~保存をすることができる。
 もうこれからはマイクロソフトの商業主義に煩わされることなく、OpenOffice.orgを採用することを奨めたい。もっともテキストエディタ主義者にとってはしょせん一時的な利用価値しかないのは当然の帰結であることに変りはない。

(*)Microsoft OfficeはワープロソフトWord、表計算ソフトExcel、プレゼンテーションソフトPowerPoint、メールソフトOutlook、データベースソフトAccessその他を一体化した統合ソフトである。
(**)Netscape Navigatorはその後、フリーソフトのMozilla Firefoxとなっていまだに一定程度以上のシェアを保っている。ただ、インターネットバンキングその他の使用にあたってはInternet Explorerしか許容しないという不合理な状況が生まれており、制度的にFirefoxやOperaといったすぐれたブラウザソフトがInternet Explorerの下位に位置づけられているのは反動的というしかない。
(***)このソフトの日本語版のダウンロード先はhttp://ja.openoffice.org/download/で、さまざまな追加機能もダウンロードできる。

 パソコンにさまざまなプログラムやユーティリティソフトを導入するさいにインターネットからダウンロードすることが多い。主要なアプリケーション用のインストール・プログラムの多くは自動解凍型(「.exe」の拡張子が付いているもの)が多いが、ちいさなプログラムファイルは「.lzh」や「.zip」といった圧縮ファイルになっているのがほとんどだ。こうしたファイルは解凍ソフトを使って解凍しないと展開することができない。また最近ではやらないひとが多くなったが、すこし大きいファイルやフォルダをメールで添付するときに、容量やセキュリティの問題への配慮のためにこれらを圧縮して相手に送ることもある。こうしたファイルを受け取るときにも解凍ソフトが必要になる。こういうときに備えて圧縮・解凍ソフトを用意しておこう。(*)
 Windows用の数ある圧縮・解凍ソフトのなかで、もっとも簡便で高機能なのは「Lhaca」(村山富男作)と呼ばれるフリーソフトであろう。作者の説明によれば「Lhacaデラックス版は、+Lhacaの機能を拡張し、LZH, ZIP, CAB, GZ, Z, BZ2, TAR, TGZ, TAZ, TBZ, JAR, ARJ, RARファイルの圧縮・解凍・分割・一覧が行なえるツール」である。こうしたユーティリティはいくつかのファイルをひとつの圧縮ファイルにまとめてしまうこともできるので、「アーカイバarchiver」とも呼ばれる。
 使い方はいたって簡単である。ダウンロードしたプログラムファイルを実行~インストールして得られるフォルダのなかの「Lhaca .exe」のショートカットをデスクトップに置いておき、圧縮したいファイルまたはフォルダ、あるいは解凍したいファイルをそのショートカットアイコンにドラッグ&ドロップするだけである。そうして得られた圧縮ファイルまたは解凍ファイルは設定にもよるが、たとえばデータ用ドライブに「archive」フォルダを作っておき、そこに収録するのがよい。
 設定は以下のようにする。デスクトップの「Lhaca .exe」のショートカットをダブルクリックして開かれる設定画面で解凍、圧縮のそれぞれ解凍先、圧縮先を「その他」をクリックすると開かれるフォルダの参照ダイアログで先ほど作っておいた「archive」フォルダを選択する。つぎに「解凍」にかんするチェックボックスのすべて──「全ファイルが圧縮形式なら解凍」「フォルダを作ってその中に解凍」「同名のファイルは上書き」「解凍後フォルダを開く」にチェックを入れる。また「圧縮」にかんしては「圧縮形式」は六者択一だが、通常「ZIP」にチェックを入れておく。また「同名のファイルは上書き」「圧縮後フォルダを開く」にチェックを入れておく。下の関連づけにかんしては「LZH」「ZIP」「CAB」「TGZ」「ARJ」「PAR」のすべてをクリックして凹ませておく。こうしておけばたいていの圧縮ファイルには対応できる。
 もっと細かい使い方は同梱の「readme.txt」にくわしく書いてあるので参照してほしいが、そのなかでひとつだけ知っておいたほうがいいのは、圧縮したいファイルやフォルダーをドロップするときにSHIFTキーを押しながらドロップすると自己解凍形式の圧縮ファイルができるという点である。これは相手が解凍ソフトをもっていないような場合に、ダブルクリックで自動解凍できるようにするための配慮である。
 とにかく軽量で軽快な、仕事をするひとのためのツールである。

(*)通常、解凍機能だけのソフトというものはなく、圧縮機能もいっしょになっているので、「圧縮・解凍ソフト」と呼ぶ。

 通常、パソコンのクリップボードはコピーないしカットした単語あるいは文字列をひとつしか記憶できない。つまり新しく単語あるいは文字列をコピーないしカットすると、以前のものは上書きされてしまう。いくつかの記号や単語を不連続に何度も使うような場合、そのつどコピー元を探してコピーし直さなくてはならないようでは、効率は悪いしストレスもたまるだろう。それならそのつど入力してしまったほうが早いぐらいのこともある。
 そうしたクリップボード機能の拡張をしてくれるのがここで取り扱うクリップボード・ユーティリティである。これらはコピーしたりカットした文字列をそのつど上書きせずに一定数クリップボードに記憶しておくツールである。
 秀丸エディタのように独自にクリップボード履歴機能をもっているテキストエディタもあり、最大合計で999KBまでの履歴をもつことができる。「編集」メニュー~「クリップボード履歴」を選択し、必要な単語を選択し「取り出し」ボタンを押すとクリップボードのトップに置かれるようになるので、あとはペーストするだけで済む(*)。この機能を使うには初期設定で「秀丸の常駐」と「クリップボードの履歴を取る」機能をオンにしておく必要がある。ただし、この機能はパソコンを終了してしまうとすべて消去されてしまう。
 その意味で、クリップボード・ユーティリティには保存(登録)機能があるものが望ましい。Windows系にはいろいろあるが、圧倒的に使い勝手がいいのは寺尾進氏作のフリーウェアToClip for Windows(入手先はhttp://www5f.biglobe.ne.jp/~t-susumu/)である(**)。このユーティリティが便利なのは、クリップボード履歴としては50個までだがデータ保存ができるのと、重要なデータは「テキスト編集」画面でデータを選択し、「編集」メニューから「登録テキストへ追加」を選ぶことによって履歴データから別枠で100個まで保存することができることである。これらはパソコンを終了させても再起動時に読み込ませることができるので、いつでも使うことができる。使い方としては、モニタの[スタート]ボタン以外の3つの隅にマウスをあてるか、ショートカットキー(通常はAlt+Qキー)でクリップボード履歴か登録データ一覧をポップアップさせ、必要なデータを選択するだけで画面のカーソル位置に貼付することができる。(なお、このためにはタスクトレイのToClipのアイコンを右クリックし、「貼り付けモード」がオンになっている必要がある。)決まり文句や編集用の各種記号(わたしの場合は編集用タグ)などを登録しておけば、面倒な記号類をわざわざ入力することもないし、うっかりした入力ミスも免れることができる。不要になったデータは「テキスト編集」画面で削除すればよい。
 もうひとつ紹介しておきたいのが、簡単で軽快なQTClip(フリーウェア)である。これは新井健二氏作の傑作QXエディタ(シェアウェア)の付属品として単体でも使えるユーティリティ(入手先はhttp://www2k.biglobe.ne.jp/~araken/qtclip.htm/)である。これはToClip for Windowsに比べると使い勝手がやや落ちるが、ToClip for Windowsがまれに起動時の読み込みに失敗する不具合があってせっかくのデータをクリアしてしまうことがあったりするので、そのときのバックアップとして使っている。タスクトレイのアイコンをクリックすると開かれるQTClipの画面は上下2つに分かれていて、コピーしたりカットしたりすると下のクリップボード履歴欄に上から保存され、そのいちばん上にあるものが即利用可能なデータとなる。2番目以下にあるデータはダブルクリックすることで最上位になり、そのままペーストなどで使えるようになる。またこの履歴欄のなかから特定のデータを選択して上の欄にドラッグ&ドロップすると登録される。これはハードディスクに記憶され、ToClip for Windowsと同じように、パソコンを終了させても再起動時に読み込み直されるので、いつでも使えるようになるのである。
 これらのクリップボード登録データを再起動時に読み込ませるには、「11 『スタートアップメニュー』で最小限の起動をしておく」で記述したように、これらのクリップボード・ユーティリティのショートカットを「スタートアップ」フォルダに入れておく必要がある。
 これらのクリップボード・ユーティリティは同じ単語や文字列をよく使う原稿執筆や編集作業にきわめて簡単で有効なツールである。ATOKの単語登録とあわせて使いこなせれば原稿入力や編集作業のスピードアップに役立つだろう。しかしこのクリップボード・ユーティリティはとりわけ編集処理をするうえで役に立つもので、編集者には必携のツールであることは認識しておいてほしい。いちど使い込んだら二度と手放せないきわめて便利なツールなのである。

[ToClip for Windowsの設定の詳細]
[オプション設定](タスクトレイのアイコンを右クリックして「オプション」を選択)
★[履歴]タブ
 「履歴機能を使用する」:オン
 「起動時に履歴をクリア」:オフ
 「履歴に残す件数」:最大の50に設定(推奨)
 「メニューに表示する件数」:最大の50に設定(推奨)
 「メニュータイトル文字数」:40に設定
 「タイムラグ」:1ミリ秒を選択(推奨)
 「表示順序」:昇順(推奨)
 「表示位置」:常に後尾(推奨)
 「折り返し表示する」:オン
 「折り返す件数」:10(推奨)
 「重複データを削除する」:オン
 「クリップボードへ送った履歴を先頭へ移動」:オン
 「MS-WORDのデータは履歴に残さない」:オン
 「MS-Excelのデータは履歴に残さない」:オフ(オンも可)
★[ポップアップメニュー]タブ
 「ホットキー:左クリックポップアップ」:Alt+Q(推奨)
 「ホットキー:右クリックポップアップ」:なし
 「左メニュー表示位置」ラジオボックス:キャレット上
 「貼り付け時キャレットを元の位置へ戻す」:オン
 「履歴をメインに、登録テキストをサブで表示する」:オフ(オンも可)
★[オートポップアップ]タブ
 「左メニューをオートポップアップする」:オン
 「対象ウィンドウ最大化時、左右上隅はポップアップしない:オン
 「ポップアップする位置」:左上隅、右上隅、右下隅をオン(スタートメニューの位置以外が可)
★[その他]タブ
 「タスクトレイのアイコンを左クリックした時の動作」:テキスト編集画面を開く
 「テキスト編集画面を開く」:Alt+1

(*)「その他」メニュー~「動作環境」設定の「ウィンドウ」~「ツールバー」の「ツールバー詳細」ボタンで「クリップボード履歴」ボタンをツールバーに割り付けるとこの操作がワンタッチでできる。
(**)寺尾進氏にはHTMLタグのためのクリップボード・ユーティリティとしてToClip Hyperというツールもあり、多機能である。

 これまでの記述は、Windowsの使い勝手をよくするためのさまざまなツールやWindows自体の機能を紹介することにあった。これ以外にもまだいろいろあるにちがいないが、わたしがここで主として目的にしているのは、著者や編集者がパソコンを使って仕事をするうえで必要と思われ、知らないでいると損をすると思われるものをわたしの経験に即して記述してきただけである。一部には外部から導入しなければならないユーティリティもあったが、これらはいずれにしてもパソコンを使って仕事をするうえではもっとも基本的なものであるから、早めの導入をお奨めした次第である。
 さてここからは、執筆や編集のうえで基本的なツールを紹介し、その使い方を具体的に記しておこう。「7 インストールしておきたいユーティリティ類」ですでに述べたように、いくつかのユーティリティ類の導入について説明する。
 その第一は、バックアップ・ソフトである。Windowsにもシステムツールとしてバックアップ機能はあるが、ここではもっと使いやすいツールとしてDiskMirroringToolを紹介しておきたい。これはフリーソフトで以下のサイトで簡単に入手できる。(http://www5.wisnet.ne.jp/~mercury/download/dmt122.exe
 バックアップ・ユーティリティとはある意味では単純なソフトで、基本的にファイルのタイムスタンプをチェックして古いデータを新しいデータに置き換える(これを「同期」と呼ぶ)だけのことだが、こうしたちょっとした作業が、不測の事故から重要な文書を保護することにつながるので馬鹿にしてはいけない。備えあれば憂いなし。この安心感が非常に重要なのである。
 このツールは具体的に何をするかというと、本体のデータフォルダの内容をバックアップ用デバイス(外付けハードディスクとかUSBメモリスティックとか)に同じフォルダ構造をもつデータフォルダと同期させ、コピー、更新、削除をおこなうものである。すでに「12 ファイルの保存と管理の方法」で述べたように、たとえばわたしは「Documents」という文書フォルダを作成し、すべての自己作成ファイルないし必要なファイルを階層化してまとめてあるが、バックアップ用の外付けハードディスクにも「DocumentsBackup」というまったく同じ内容のフォルダを作成し、これを自宅と仕事場のそれぞれのパソコンと同期させている。すなわち、家で仕事をしたあと、このDiskMirroringToolを使って、外付けハードディスクの「DocumentsBackup」にバックアップし、それを仕事場に持っていって今度はこの外付けハードディスクから仕事場のパソコンの「Documents」フォルダに同期させてバックアップする。これによってこの瞬間に家と仕事場と外付けハードディスクの内容はすべて一致していることになり、今度は仕事場で新しく作成したり更新したデータを帰るときに外付けハードディスクに同期させて家に持ち帰る。この繰り返しである。うっかりこの作業を忘れると、途中が抜けてしまい困ったことにならないとは限らないが、そのための方策もないわけではない。(*)
 DiskMirroringToolは、バックアップ元フォルダとバックアップ先のフォルダを比べて、バックアップ先にないファイルやフォルダは新たに「作成」し、同じファイルでも古いものを見つければ「更新」する、バックアップ先に残っているがバックアップ元からは削除してしまったファイルやフォルダがあれば、確認のうえ「削除」する、という作業(これをとくに「ミラーリング」と呼ぶ)をするものである。作業ファイルを設定してログを残すこともできる便利なソフトである。
 以下にDiskMirroringToolの設定のしかたの詳細を示しておこう。
 まず、DiskMirroringToolを起動すると、バックアップないし同期させるフォルダ指定のダイアログが出てくる。ここで最初に「プロジェクト」欄で作業内容の名前を決める。「デフォルト」と表示されている文字の横の「名称変更」ボタンをクリックし、たとえばここでやろうとすることが本体の文書フォルダのバックアップだとすれば「文書BackUp」とする。
 つぎに「フォルダ設定」メニューから「追加」を選択(その下のツールバーの「追加」アイコンをクリックだけでもいい)し、「一般」タブの「名称」にたとえば「本体→外付HD」とでも表示する。ここは端的にわかりやすく記述しておくだけでいい。
 こうしておいて「マスター側」と「バックアップ側」にそれぞれのフォルダを指定する。設定欄の右側にある「...」ボタンをクリックしてフォルダを指定する。外部メディアを使っている場合には「バックアップ開始時にボリュームラベルをチェックする」をオンにしておく。「自動バックアップの対象にする」はオフでいい。
 つぎに「動作設定」タブでは「サブディレクトリを含めてバックアップする」をオンにする。階層化されているフォルダをまるごとバックアップするにはこのチェックは必須だ。逆に「バックアップ側のファイルが新しい場合も上書き」はオフにしておいたほうが無難だ。バックアップ側のファイルが新しいこともありうるが、それは逆方向のバックアップ設定をした作業ファイル(たとえば「外付けHD→本体」)を別途に走らせるほうが安全だろう。もっともひとによってはこの機能をオンにすることにより、相方向に同時バックアップするほうを好むかもしれない。その場合はオンでいい。「マスター側に無いファイルはバックアップ側から削除」はオンにしよう。これがミラーリングの実質的作業なのである。つまりマスター側で削除したファイルやフォルダをバックアップ側に反映させるのである。そのさいに「[バックアップ]⇒[ミラーリング]の順で行う」をその下のプルダウンメニューで選択しておくほうがいい。まずバックアップ、それから削除処理をおこなうというわけである。容量がすくないときはこの逆を選択することも可能である。
「ターゲット指定」タブでは「ディレクトリ指定」「ファイル指定」は特別に何も指定しなくていい。処理したりしたくないファイルやフォルダがあればここで指定する必要があるが、フォルダ全部を同期させるのが本来の目的だから、あまり必要はないはずである。「バックアップ対象ファイルの日付指定」は「全てのファイル」を選択しておこう。
「ログファイル」タブでは「専用でログファイルを指定する」をオンにし、「ファイル名」をたとえば「C:Program Files:文書BackUp.LOG」とする。これはあとでエディタで開いて確認したり、出力することもできるようにするためである。「バックアップ毎にログをクリア」をオンにしておくと、最新の作業ログだけを残すことができる。作業ログを一定期間残しておきたい場合にはオフにしておく。いくつものマシンでファイルをやりとりしているようなひとにとってはありがたい機能である。なお、このログファイルを開けるようにするためには、「.LOG」ファイルの関連づけをしておかなければならない。その設定方法は以下のようにする。「フォルダオプション」コントロールパネルを開き、「ファイルの種類」タブから「LOG」を探しだし、「変更」ボタンを押すと開く「ファイルを開くプログラムの選択」ダイアログからたとえば秀丸を選択すればよい。
 こうしてプロジェクトとフォルダ設定を作ったら、それらのどれかをプルダウンメニューと「名称」のクリックで選択して「フォルダ設定」メニューから「設定編集」で修正したり、「複製」で別の設定のためのファイルを作ることができる。こうしていくつものプロジェクトとフォルダ設定を作ることができる。
 これらを実行するには、それらのひとつの作業ファイルを選択し、「バックアップ」メニューから「WinDIFFを起動」をまず選択する。これはマスター側フォルダとバックアップ側フォルダの差分だけを取り出す機能をもつ。そのあとでやはり「バックアップ」メニューから「テスト」ボタンを選択する(ツールバーの「テスト」アイコンをクリックしてもよい)。すると差分ファイルやフォルダの名前と日付・時間の一覧が表示される。ファイル名の左側に「作成」「更新」「削除」と表示されるのでどういう処理がおこなわれるのか確認できるのである。ファイル処理に問題がないことを確認して「バックアップ」メニューから「更新」をクリックする(たんにツールバーの「更新」ボタンをクリックするだけでもよい)とファイル処理がおこなわれる。なお、いきなり「更新」作業をせずにかならず「テスト」作業をしてから使用することをお奨めする。うっかり削除してはいけないファイルを削除してしまわないようにすることもあるからである。
 以下にこの設定を一覧のかたちでまとめておく。

[DiskMirroringToolの「フォルダ設定」]
★「一般」タブ
 「名称」:(たとえば)本体→外付HD
 「マスター側」:C:Documents(わたしの場合はCドライブでなくDドライブ)
 「バックアップ側」:F:DocumentsBackUp(ドライブ名はそれぞれでちがうので注意)
・「ボリュームラベルのチェック」
  「バックアップ開始時にボリュームラベルをチェックする」:オン
  「一致しない場合はこのフォルダ設定をスキップ」:オフ
 「自動バックアップの対象にする」:オフ
★「動作設定」タブ
・「バックアップ」
  「サブディレクトリを含めてバックアップする」:オン
  「バックアップ側のファイルが新しい場合も上書き」:オフ
  「バックアップ側に日付のディレクトリを作成する」:オフ
・「ミラーリング」
  「マスター側に無いファイルはバックアップ側から削除」:オン [バックアップ]⇒[ミラーリング]の順で行う
  「ファイルを削除するときは確認ダイアログを表示」:オフ
 「タイムスタンプの誤差対策を行う」:オフ
 「エラーが出たファイルは無視する」:オフ
 「ファイル名のチェックを行う(不正なファイルは無視)」:オフ
★「ターゲット指定」タブ
 「ディレクトリ指定」「ファイル指定」:何も指定しない
 「バックアップ対象ファイルの日付指定」:全てのファイル
★「ログファイル」タブ
 「専用でログファイルを指定する」:オン
  「ファイル名」:C:Program Files:文書BackUp.LOG
 「バックアップ毎にログをクリア」:オフ(オンも可)
★「スケジュール」タブ
 「自動実行で実行された場合の動作設定」:毎回実行する

(*)わたしの場合は、ファイルに変更をくわえたり、新しくファイルを作成したりしたときには、USBメモリスティックのたとえば「仕事場→自宅」フォルダに手動でファイルをコピーしておくようにする。うっかりバックアップを忘れたときにこれが最小限生きるからである。これをしてみるとDiskMirroringToolの「テスト」で作られる一覧と比べることによって、ちょっとした修正ファイルの差分など覚えていられないことを痛感させられる。一括処理でバックアップすることの重要さがこれでもわかるのである。

 すでに「10 [スタート]メニューはすべての引出し」で述べたように、しょっちゅう使っているアプリケーションやファイルのショートカットは階層化して[スタート]メニューに入れてしまえば、デスクトップには必要最小限のものを置いておくだけでよい。デスクトップを広く使うためにも、余分なものは置かないほうがいいのである。もっとも初心者はファイルの保存・管理のしかたを知らなかったりするためにデスクトップにファイルを撒き散らしているのかもしれないが、前項「12 ファイルの保存と管理の方法」でわかりやすく触れておいたように、できるだけ本来のファイルは階層化してフォルダに整理しておくようにしたい。
 そこでデスクトップに置いておくべきものは何かということになる。基本的には、デスクトップは一時的なファイル保存にもちいる以外には、ファイルをドラッグ&ドロップして保存するためのフォルダのショートカットか、圧縮・解凍ソフトのようにファイルをドラッグ&ドロップして圧縮したり解凍するためのツールのショートカットを置いておくだけでよい、というのがわたしの考えである。必要でないものは「マイコンピュータ」や「マイドキュメント」のようにデフォルトで設定されているものでさえも削除してかまわない。
 わたしの場合は、すでに書いてきたように、エクスプローラでフォルダを開くように標準設定しているので、フォルダをクリック(ふつうはダブルクリック)すればそのフォルダを起点にすべてのフォルダが見えるようにしている。しかし通常は「マイコンピュータ」が起点になってしまうので、より日常的に用いるフォルダのショートカットをデスクトップに置いておくと、それをクリックするだけでそのフォルダを起点としてそれより同等かそれより上位のすべてのフォルダ構造が見られるようにできる。わたしは「diary」フォルダのショートカットをデスクトップに置いているので、ファイルの取り出しや保存が容易である。また、Internetでプログラムファイルのダウンロードをしたり、CD-ROMからその種のファイルを取り出し保存するために「Program Files」フォルダのショートカットも置いておきたい。この「Program Files」フォルダはCドライブの直下にあるものだが、通常はインストール用のプログラムファイルなどはこの「Program Files」フォルダに保存してからインストール作業などをするべきなので、とにかくその手のファイルはドラッグ&ドロップでこのフォルダのショートカットに入れてしまえば簡単である。
 ほかによく使うファイル類なども通常はフォルダ構造のかなり下位の階層にあるフォルダに置かれていることが多いので、ひとによってはこれらのフォルダのショートカットをデスクトップに置いておくととても便利である。わたしの場合で言えば、秀丸エディタのマクロ用フォルダのショートカットをデスクトップに置いている。これなどはCドライブ~「Program Files」フォルダ~「Hidemaru」フォルダの下にあるので、いちいち呼び出すのが大変である。こうしたショートカットをデスクトップに置いておくと、そのショートカットをクリックするだけでそこまでの階層が一発で開けるのである。
 あとは、圧縮ファイルをドラッグ&ドロップで解凍できるように、あるいはファイルやファイルグループを圧縮するのに、圧縮・解凍用ツールのショートカットをデスクトップに置いておくのが便利である。たとえば「Lhaca」というフリーソフトは非常に軽いうえにたいていの圧縮ファイルを解凍することができるので、とにかくここにドラッグ&ドロップすれば簡単にことがすむ。(ダウンロード先はhttp://www.vector.co.jp/soft/win95/util/se166893.html

 ここでファイルの保存と管理の方法についての基本的な考えを書いておきたい。
 まず自分の作成したファイルはきちんとフォルダ(*)に分類し、かつ階層化して保存していく習慣をつけなければならない。パソコンを使いやすくするためには、どのファイルをどこに保存するかを日常的に十分に把握していなければならない。そのためには自分にとって必要でかつわかりやすい分類がまず必要である。これは使うひとの用途によってさまざまであるから一般化しやすいものではない。
 だが一般的には、ファイルは純粋に個人用のものと仕事用のものとに大きく分けられる。まずはこれらをフォルダ化していくのがいいだろう。そこに必要なファイルを保存していくのである。
 たとえば、編集者であれば、仕事に使うファイルとしては著者の原稿やその修正ファイル、関連データなどがあるだろう。著者だったら原稿や研究のためのデータなどが仕事用フォルダに収録されるべきものだろう。そして当然ながら仕事にもいろいろ種類があり、編集者で言えば、編集中の書籍ごとのフォルダが必要になろうし、著者なら書きかけの原稿やデータの目的ごとにフォルダを分ける必要があるだろう。それらは当面、仕事用フォルダのなかに新たに下位フォルダを作成して別々に保存するのがいい。
 個人用フォルダにも、たとえば手紙やハガキのように、分類化しやすいもので一定数が集まるような種類のファイルはひとつの下位フォルダとしてまとめておくと便利である。
 こうして大きなフォルダから下位のフォルダへ、さらにそのなかにさらに下位フォルダを作っていくことを「階層化」と呼ぶ。これはつぎつぎにファイルを保存していく過程で、おのずからあるまとまりをフォルダ化する必要が出てきたら、そのためのフォルダを作ってそのつどファイルを整理していけばよい。基本的な方法としては、まず大きなフォルダのなかに下位フォルダを作成していき、それらがかなり大きなフォルダに成長し、かつその使用頻度が高いものだったら、下位フォルダ自体を独立させ、もとのフォルダと同格にすることにすればよい。
 わたしの場合を例にあげれば、すべての自己作成データを「Documents」フォルダとしてまとめておいたうえで、その下位フォルダとして「diary」「editing」「eigyo」「letters」「MiraishaDocuments」「MiraishaHomePage」「MonthlyWorks」「NishitaniDocuments」「writing」などを置いて、さらにその下にさまざまな下位フォルダが階層化されている。もちろん、これらはときどき分類方針を変えることによって、上位フォルダに昇格されたり、下位フォルダに格下げされたりすることがある。
 いずれにせよ、基本的なことは、最上位に必要度、使用頻度などに応じたフォルダを設定することである。一定の期間だけ上位フォルダとしておき、用がすんだら下位フォルダに戻すなどという使い方もいいだろう。ただ、ハードディスクから削除してしまうものはともかく、基本的に用がすんでも保存しておく必要のあるものが多いだろうから、そうしたファイルやフォルダが大量にたまった巨大フォルダがあっても、そうしたものまでわざわざ階層化する必要はあまりない。要するに効率の問題であり、使い勝手を良くすることに眼目があるからだ。
 なお、上記のわたしのフォルダの例のように、フォルダには、できれば日本語ではなく英語またはアルファベットの名前を付けておくことをおすすめする。なにかの拍子で日本語表記が表示されない事態(**)などが生じた場合にでもアルファベットは読み取ることができるからである。これはコンピューターの特性を考えるときの古くからのいわば常識なのであるが、現代のコンピューターではそういう事態になることがすくないために認識されていないだけで、そういう不測の事態のためにもはじめから準備をしておくことをおすすめする。

(*)「フォルダ」とはファイルの集合形式を指す。Linuxや以前のMacintoshでは、これを「ディレクトリ」と呼んでいる。Windowsではエクスプローラでツリー状にフォルダの階層状態を示したときに見られるフォルダの包含関係を「フォルダ構造」と呼ぶ。
(**)日本語環境が急におかしくなったときとか、別のOS(たとえばLinux)で同じディレクトリ(フォルダ)を見ようとすると、日本語はふつうは文字化けして読めないが、欧文はすべて読み取ることができる。

[スタート]メニューとは名前が似ているが、まったく異なる機能として[スタートアップ]メニューがある。これはWindows起動時に必要なプログラムまたはファイルを同時に起動する設定である。
[スタートアップ]メニューを活用するためには、Cドライブの「Documents and Settings」フォルダのなかにある「Default User」またはパソコン使用者の名前の付いたフォルダのなかの「スタートメニュー」フォルダの下位フォルダである「プログラム」フォルダのさらに下位にある「スタートアップ」フォルダに必要なアプリケーションやファイルのショートカットを入れておけばいい。
 マシンの性能やパワーにもよるが、あまり負担をかけるのも問題なので、必要に応じて起動すればよいプログラムやファイルはWindows起動後にそのつど起動する。重いアプリケーションなどはWindowsの起動自体も遅くなるので、できればここではどうしても必要なものに限定しておくべきである。ウィルスチェック・ソフトやWindowsが必須としているファイルなど自動的にOS起動時に起動するように設定されているプログラムはとくに指定する必要はない。
 わたしが設定しているのは、毎日かならず使う「総合日誌.txt」という日録ファイル(これは秀丸エディタに関連づけられているので秀丸も自動的に起動する)のほかに、ToClipとQTCLIPという2種類のクリップボード・ユーティリティ(これらはOS起動時にそれぞれに登録されたデータを読み込む)、卓上カレンダー・ソフトのそれぞれショートカットだけである。当面これだけあれば、さしあたりすぐ作業にとりかかれる。ひとによっては毎日書きつづけている原稿だとか、家計簿のソフトだとか、そのひとにとってかならず使うファイルのショートカットをそこに作っておけばよい。そして言うまでもなく、そこまでの必要がなくなったらそのショートカットを削除すればよいのである。

 つづいてWindowsの基本的機能である[スタート]メニューの活用について考えよう。最近のWindows7とかVISTAについてはよく知らないが(*)、画面の左下にある[スタート]ボタンの活用である。すでに本稿の「4 『スタートメニュー』のカスタマイズ」で[スタート]メニューの使い勝手をよくするカスタマイズの方法を書いておいたので参照してほしい。
 問題はそこになにを登録するかである。もちろん、これにはそのひとがパソコンで何を実現しようとしているのかによって大きなちがいが生ずるのは当然だが、ここではごく普通の著者・編集者が必要とするファイル処理、ファイル操作に関連するものを登録しておきたい。
[スタート]メニューをクリックすると立ち上がるポップアップメニューには、デフォルトでは下から「終了オプション」、ユーザ名のログオフ、以下「プログラム」とあって、あとはWindows関連のツール類があるだけである。モニタの大きさにもよるが、小さいアイコン表示に指定しておくと、20から30ぐらいのファイルやフォルダのショートカットを入れておくことができる。このスペースを有効に使うことによって、日常的に必要とする作業はほとんどこの[スタート]メニューを引出しとして実現できるようになるはずである。ひとによっては画面上にショートカットを星座のごとく撒き散らしているのをよく見かけるが、開いているファイルの下になってしまったり、探しにくかったり、不便なことこのうえないだろう。それらを[スタート]メニューに収めてしまえばいいのである。不要になったら、このショートカットを削除すればいい。
[スタート]メニューを活用するためには、Cドライブの「Documents and Settings」フォルダのなかにある「Default User」またはパソコン使用者の名前の付いたフォルダのなかの「スタートメニュー」フォルダに必要なアプリケーションやファイルのショートカットを入れておけばいい。
 たとえば、わたしは各種日録のように毎日使うファイルのショートカットを入れるようにしてある。ほかは住所録や予定表とか経理処理用のファイルである。連載原稿などは、ひとまず「原稿」フォルダを「スタートメニュー」フォルダ内に作成し、それぞれの原稿のショートカットをそこに入れておけば、必要なときに「原稿」フォルダのプルダウンメニューから引き出すようにできる。つまりフォルダにはサブメニューのようにして関連ファイルを収納するのが効率的である。
 基本的に[スタート]メニューに置くものは、毎日のようにつかうファイルやアプリケーションのショートカットと、頻度は落ちるが使う可能性のあるファイルやアプリケーションのショートカットをグルーピングしてフォルダにまとめておくのが効率的である。それも頻度の高いものほど下側に、つまり[スタート]メニューに近いところに置くようにすると[スタート]メニューのクリックのあとに立ち上がるポップアップメニューからヒットさせやすい。
 これもわたしの例で言えば、アプリケーションとしてはBecky!とMozilla Thunderbird(メールソフト)、Mozilla FirefoxとInternet Explorer(ブラウザ)、Disk MirroringTool(バックアップ・ユーティリティ)、WinLPrt(印刷ユーティリティ)、iTunes(音楽再生ソフト)、WinDVD(DVD再生ソフト)、OpenOffice(Microsoft Officeに代わるパッケージ)などのショートカットを置き、その他はすべてフォルダにまとめてある。「入力ソフト」フォルダには秀丸エディタのほか、QXエディタ、LightWayText、Word、一太郎のショートカットを収録し、「application」フォルダとしてはPartitionMagicとPartitionExpert(パーティション分割ソフト)、FileMaker(データベースソフト)、eTypist(OCRソフト)などのショートカット、「utilities」フォルダには卓上カレンダー(カレンダーユーティリティ)、窓の手、コンバートスター統合版(コンバートソフト)、Adobe Reader、WinLPrtなどのショートカット、「Internet」フォルダにはFFFTP(FTPソフト)、Microsoft Outlook(メールソフト)のショートカットが入れてある、といった具合だ。
 このほかに「4 『スタートメニュー』のカスタマイズ」で指摘したように、[スタート]メニューで「コントロールパネルを展開する」を表示しておくと、[スタート]メニューのポップアップメニューのなかに「コントロールパネル」がサブメニュー付きで表示されるので、ずっと便利になる。

(*)わたしはWindows XPを使っているが、ほんとうはWindows 2000がWindowsのなかでももっともいいOSだと思っている。

 ここまでは主としてパソコンを使いはじめるにあたっての導入篇とでも呼ぶべきもので、OSの再インストールの必要があるときや主要なアプリケーションをインストールするときなどに、あらかじめ導入しておくと便利なツールや設定しておくと有効なWindowsの機能を紹介した。ここからはパソコンを使って執筆や編集の仕事を進めていくうえで知っておくと便利な隠れた機能、あるいは必ずしも一般的に使いこなされていないと思われる使い方を紹介していきたい。これらの機能や使い方は特定のアプリケーションやツールに依存するものではなく、Windowsに一般的に共通するものが多いはずである。
 それらのうちでまず「送るSendTo」メニューを活用することをお奨めする。これはファイルを別のアプリケーションで開いたり、別のフォルダにコピーするなど、一回の操作で簡単に実現できるようにするものである。
 たとえばあるテキストファイルをWordで開いたり、カンマ区切りテキストやタブ区切りテキストのファイルをExcelで開いたりすることができる。ExcelファイルをOpenOfficeの表計算ソフトscalcで開くこともできる。圧縮ファイルを圧縮・解凍ソフトで解凍したり、逆にファイルを圧縮することもできる。ファイルの上で右クリックすると開かれるプルダウンメニューのなかから「送る(N)」を選び、さらにその下位プルダウンメニューのなかに登録されているアプリケーションを指定すれば、そのアプリケーションでファイルを開くことができるのである。もちろん、開くことができるからには、そのアプリケーションで保存することもできる。そのためにはどうすればいいのか。
「送るSendTo」メニューを活用するためには、Cドライブの「Documents and Settings」フォルダのなかにある「Default User」またはパソコン使用者の名前の付いたフォルダのなかの「SendTo」フォルダに必要なアプリケーションのショートカットを入れておけばいい。同じような使い方をできるものに、やはりファイル上での右クリックで開かれるプルダウンメニューのなかの「プログラムから開く(H)」もある。こちらにもいくつかのアプリケーションが自動的に登録されていて、ファイルの種類によってはプログラムを選択できる。そこにないものは「プログラムの選択」から開かれるリストのなかで選択すればいい。その意味では「送るSendTo」メニューは「プログラムの選択」メニューをより広くカスタマイズしたものと言うこともできる。(*)
 しかし、すでに触れたように、「送るSendTo」メニューの活用はプログラムの選択~開くだけに限られるわけではない。あるファイルを別のフォルダにコピーするときにも使えるのである。このときにもそのフォルダのショートカットを「SendTo」フォルダに入れておけば、そのファイル上で右クリックしたときに「送る」のプルダウンメニューのなかからそのフォルダ名を選択すれば、コピーが実現する。(**)使用頻度の高いフォルダのショートカットを「SendTo」フォルダに入れておけば、いちいちそのフォルダを開かずにコピーが簡単にできるのである。
 以上のように、「送るSendTo」メニューの活用とは、主としてファイルを開く、ファイルをコピーするときに便利なのであるが、このメニューを頻用するひとのためには裏技がある。「SendTo」フォルダに必要なショートカットを入れようとする場合、いちいち「SendTo」フォルダを開いてそこにコピーをするのが面倒なので、「SendTo」フォルダのなかにその「SendTo」フォルダ自体のショートカットを入れてしまうのである。こうしておけば、ファイルやアプリケーションのショートカットがあれば、そのファイル上で右クリックから「SendTo」を選択するだけでそのショートカットがコピーされるので、「送る」メニューで使えるようになるのである。また、「SendTo」にはすでに「デスクトップ(ショートカットを作成)」を選択できるようになっているので、ファイルまたはアプリケーションのショートカットを作るのも簡単である。
 そんなわけで「送る」メニューは慣れれば頻繁に使えるようになり、非常に有効な機能なのである。各人各様、必要に応じて試してみたらどうだろうか。

(*)なお、「送るSendTo」メニューでも互換性のないものは開くことができないか、開けないわけではないが文字化けなどになる。たとえばWordのファイルをテキストエディタで開くことは意味がない。一般的にバイナリファイルはそのアプリケーション固有のものでしかないので、原則的に他のアプリケーションでは開くことができない。
(**)通常は同じドライブの中ではファイルの移動になり、別のドライブならファイルのコピーになるのだが、「送る」ではすべてコピーになるようだ。

 Windowsの場合、通常は購入したままだとデフォルト(工場出荷設定)でシステムもふくめてデータはすべてCドライブに格納されることになっている。パソコンが起動するためのOS(オペレーティング・システム)はもちろんのこと、アプリケーションや各種ユーティリティ・ソフトなどもCドライブにインストールされている。これらとともに個人的にデータ化した文書なども、とくに指定しなければ「マイドキュメント」と呼ばれるフォルダに格納されることになっている。このフォルダは一見すると「マイコンピュータ」と同じ最上位のレベルに置かれているように見えるが、じつはCドライブの「Documents and Settings」のユーザ名フォルダの下位フォルダにある同名のフォルダのショートカットにすぎない。つまりは、Cフォルダのかなり下位に置かれたフォルダが自分の作成したオリジナル・データの格納場所なのである。
 こうしたデータはいちど失なわれてしまえば、もはや回復することができない。OSや各種アプリケーション類はCD-ROMやプログラムファイルの入手から復元することは基本的にできるが、自分のオリジナル・データは前項で述べたバックアップ・ユーティリティを使ってバックアップを外部メディアに保存しておかないかぎり、二度と取り戻すことはできないのである。よくパソコンが壊れて書きかけのデータを失なってしまったと嘆いているひとがいるが、わたしに言わせれば、こうしたことは言い訳にならない。パソコンは突然壊れることもあるものであり、データはバックアップ保存を怠ってはならないというプロとしての自覚がないことをみずから吹聴しているだけなのである。
 したがってわたしは、プロの書き手ないし編集者を自負するひとは最低限つぎのことは実行すべきだと思っている。
(1)まず、パソコンは最低2台以上もち、同じレベルで使えるようにしているべきである。そしてそれぞれのパソコンの使用環境、データ保存などはつねに同一にしておくことが望ましい。とにかくパソコンはいつ壊れるかもしれないものだということ、壊れないまでもどこか不具合が生じやすいもので一時的にせよ使えない状態がありうるということを理解しておくべきであり、そうした緊急のさいにもう1台のパソコンが対応できるからである。
(2)それからオリジナル・データはかならずバックアップ・ユーティリティを使って、別のメディア(できれば外付けハードディスク)につねに同期させて最新状態を保存しておくこと。こうしておけば2台以上のパソコン同士のデータの日常的な同期も簡単にできるからである。
(3)さらにここでとくに主張しておきたいのが、同じパソコンのハードディスクを2つ以上のドライブに切り分けて、オリジナル・データはCドライブとは別のドライブ(たとえばDドライブ(*))に保存するようにすることである。こうしておけば、OSがなにかのはずみで不調になり、再インストールをしなければならなくなっても、ハードディスクが物理的に壊れてしまったのでないかぎり、データドライブ上のデータはなんら損傷をこうむることなく、OS再インストール後も問題なくそのまま利用できるのである。こうしたハードディスク上の複数ドライブのことを「パーティション」と呼ぶ。
 こうしたパーティションの切り分けはパソコンのインストール時点で設定する方法が本来のやりかただが、慣れないひとにはこわくてできないだろうし、はっきり言って面倒でもある。そのためにはパーティション分割ソフトが便利である。ちょっと高いが、あとのことを考えると結局は安くつく。たとえばPartitionMagic(PowerQuest社)やPartitionExpert(Acronis)というソフトを使えば、各パーティションの現在の状況(サイズやファイルシステム等)を知ることができるし、新規パーティションの作成、パーティションのサイズ変更、結合などがWindowsを起動したままの状態で簡単にできるのである。(**)
 とにかくこうしておけば、自分の作成したオリジナル・データは別ドライブに保存することができるので、非常の場合にそなえる意味ではひとまずは安心できるはずである。このさい、「マイドキュメント」ではなく、自分専用のフォルダとしてたとえば「Documents」フォルダを作って、そこにデータを格納するようにしたい。そこでは必要におうじてデータを階層化して保存するようにしておけば、整理がつきやすい。自分専用の文書フォルダは自主的に管理すべきものである。

(*)パソコンによってはDVD用のドライブにすでにDドライブが割り当てられているケースがあるので、その場合にはEドライブとでもすればいい。これはドライブレターと呼ばれるドライブ名設定が必要になるからであって、AとC以外の使えるアルファベットを指定する。なお、WindowsではAドライブはフロッピードライブ、CドライブはWindows用ドライブと決まっていて変更はできない。
(**)ちなみにわたしはFedoraというLINUX用のOSもマルチブートできるように設定しているので、Fedoraのインストール時にパーティション切り分けが無償でできる。