14 沖縄関連本の連続刊行

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 きょうの沖縄県宜野湾市の市長選で伊波洋一氏が惜敗した。普天間基地の県外移設、海外移設を一貫して主張してきた伊波氏にたいして、自民党・公明党ほか推薦の佐喜真淳氏がやはり県外移設を唱えて仲井真弘多知事とも連繋した結果、宜野湾市民はより融通性のありそうな佐喜真氏を選択したということだ。だがこの結果をわたしは理解に苦しむ。そもそも沖縄の米軍統治、米政府への屈服政治、さらには普天間の辺野古移設を進めてきたのは歴代自民党(+公明党)政府だったのであり、そうした政治責任のある自民党・公明党のバックアップを受けながら、それと反対の主張をする佐喜真氏自身を県民が信用したということなのか。それとも強硬な伊波氏の反米路線にはついていけないと感じたからなのか。さらには以前、名護市長選で当時の民主党官房長官が官房機密費を自民党支持者に使って辺野古移転反対派の稲嶺現市長を落とそうとした一件にみられるような裏金工作がまたしてもおこなわれたのか。野田政権のアメリカ追随路線が今回の市長選でアンチ伊波に結びついていることは明らかで、民主党県連は自主投票を今回も選択せざるをえないという体たらくをさらし、結果的には佐喜真市長当選をとめられなかった。
 それにしても、宜野湾市民はいったいなにを考えているのだろう。普天間基地問題の存在やそれに付随して起きるさまざまな事件や事故を忘れたのか。
 いま未來社ではことしの沖縄の「本土復帰四〇周年」にむけてあらためて沖縄関連本を続々と準備中である。二年まえから継続刊行中の沖縄写真家シリーズ〈琉球烈像〉全九巻の残りの三巻が中平卓馬写真集『沖縄・奄美・吐【カ】喇1974-1978』をはじめ故伊志嶺隆写真集、山田實写真集とつづけて刊行できそうである。それからPR誌「未来」で連載してもらった仲里効「沖縄と文学批評」全十七回、さらには知念ウシ・與儀秀武・後田多敦・桃原一彦各氏のリレー連載「沖縄からの報告」全二十四回もいよいよまとめに入る。宮本常一「私の日本地図」シリーズの第八巻「沖縄」も三月には刊行される予定である。さらには今回、2011年度沖縄タイムス芸術選賞文学部門(評論の部)大賞を受賞した高良勉『魂振り――琉球文化・芸術論』の続篇『言振り』や知念ウシ評論集もことしの後半には刊行予定に入っている。
 またヤマトンチュの坂手洋二さんの戯曲『普天間』もこの五月に刊行することになる。これは普天間問題を主題として沖縄国際大学への米軍ヘリ墜落事故をはじめさまざまな事件や事故を扱い、その背景にある歴史的な問題ともからませて現在の沖縄の現実を明らかにしていく戯曲である。夫人が沖縄人であるという坂手さんの沖縄への想いが結集した作品になっていると思う。できれば現地での上演ができればいいが、伊波氏の敗北によってこうした可能性が低くなってしまったかもしれない。ともかくこの秋から青年劇場が全国公演を三十回おこなうのにあわせてこの戯曲を世に送り出そうと考えている。五月までに最大で七冊の沖縄関連本が生まれることになれば、いくらかでも沖縄の情勢にコミットできることになるだろう。(2012/2/12)

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