23 湯浅博雄さんの最終講義

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 3月6日の夕方、東大教養学部キャンパスの18号館ホールにて東大大学院言語情報科の湯浅博雄教授の最終講義がおこなわれた。それにあわせて最新刊『翻訳のポイエーシス──他者の言語』(ポイエーシス叢書)を刊行させてもらった。最終講義はこのなかのバタイユ論「エロティシズムと〈存在の連続性〉をめぐって」を湯浅さんが読み上げるというかたちで進められた。約1時間半にわたって粘りのある文体で書かれた高度な内容のテクストがホールにしみ透るように響き、誠実な湯浅さんの人柄そのままに淡々と読み終えられた。終了後、開かれた祝賀会パーティでこの本が参加者に寄贈された。
 このパーティでは長らく言語情報科の同僚であった宮下志朗さんがスピーチをおこなったあとを受けて、わたしも湯浅さんと手がけさせてもらったいくつかの本の話を中心に大学院時代からのエピソードを披露させてもらった。知り合った最初から着実な研究スタイルを築いてこられた湯浅博雄さんがこうして定年退官を迎えられるということはわたしなりに感慨深いものがあり、とくに1980年代末期に〈扉の会〉という勉強会をいっしょにやらせてもらって以降は著書に、翻訳にコンスタントに本作りを共同させてもらったことは大変ありがたいことであった。
 東大を定年になったからと言って、湯浅さんのことだからまだまだ新しい仕事をされていくことだろう。いつも謙虚な湯浅さんのこれからのますます充実した仕事に協力させていただきたい。さいわい優れたお弟子さんたちも育ってきているので、そういうひとたちとも連繋して日本の出版文化を支えていってもらうよう応援したいと思っている。(2012/3/7)

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未来の窓 1997-2011

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