24 守中高明さんと本の力

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 午前中、守中高明さんから電話があり、きのうできたばかりの新刊『終わりなきパッション――デリダ、ブランショ、ドゥルーズ』の仕上がりにとても満足しているという喜びの声を聞いた。高麗隆彦さんの装幀がオビもふくめて自分のイメージを120パーセント表現してくれているとのことで、原稿とはちがって本というまとまった形になることでやはり格別な手応えをもたらしてくれるものだと言って、なにより喜んでいるようであった。守中さんとはもう二十数年のつきあいになるが、自分でも言うように「喜びを表現するのが下手」かもしれないかれの喜びには尽くせぬ思いがあることをわたしは知っている。
 守中さんはこの間、公私にわたって相当しんどい時期があったこともあって、昨年、小社の60周年にあたっての社史『ある軌跡──未來社60年の記録』刊行にあたって執筆ができないくらいだったのである。それが昨年10月末に『ある軌跡』60年版への不参加のお詫びとともに今回の本の原稿が送られてきたのだった。わたしにとってもまったく青天の霹靂でわが目を疑ったものだが、とにかくあまり元気がなさそうであった守中さんと刊行の準備をすこしずつ整えながら、しだいに元気を回復していく守中さんを励ましつつ刊行にこぎつけたわけである。この本をともに担当した明るい長谷部和美さんの協力も守中さんには好影響を及ぼしたのではないかと思う。
 さきほどの電話で「こんなんだったら、もっと早くお願いすればよかった」と守中さんは言っていた。かれとしてもひさびさの単行本刊行ということもあって、あらためて〈本の力〉をふたりで確かめあうことになった。ここでも出版が著者を勇気づけ元気にすることによって〈本の力〉を生み出すための闘争であることが確認できた次第である。
 その余波かどうか知らないが、この3月31日(土)夕方には守中高明夫妻の主催で「詩歌の饗宴――朗読と語りのゆうべ」(出演:岡井隆、平出隆、倉田比羽子、進行:守中高明)が専念寺・本堂(新宿区原町2-59、Tel: 03-3203-5895)がおこなわれる。以下は守中さんが書いたチラシの文章である──「日本の詩歌の構造は不思議です。一方に、音数律・韻律・行分けの規則などいっさいの制約のない口語自由詩があります。他方に、1300年の長きにわたって定型を守り続けてきた現代短歌があります。両者の関係はどうなっているのでしょうか。ふたつのジャンルを越境しつつさまざまな詩形式を試みる3人の実作者を招き、作品の朗読と鼎談を行ないます。チェロの演奏と肉声の響き合い、そしてしずかで熱い語り合い──ひとときの饗宴の中に、さあ何が見えてくるでしょうか。」詩人・守中高明の元気な姿を見にいきましょう。(2012/3/15)

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未来の窓 1997-2011

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