25 『沖縄からの報告(仮)』はじめに(下書き)

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 わたしが沖縄に深くかかわるようになったのは、沖縄の批評家・仲里効さんと写真家論集『フォトネシア──眼の回帰線・沖縄』のための連載原稿をPR誌「未来」で発表してもらっていた二〇〇九年ごろからであるが、とりわけ足繁く沖縄を訪れるようになるのは、この本の出版祝賀会出席のためにひさしぶりに訪沖した二〇一〇年一月二十三日からである。その出版祝賀会で、『フォトネシア』で取り扱われている写真家を中心に沖縄在住の写真家および沖縄を主要なテーマとして写真を撮っているヤマトの写真家とをあわせた沖縄写真家シリーズ〈琉球烈像〉という途方もない企画をスタートさせることになった経緯をおおいに宣伝してくれという仲里さんの促しに乗って、多くの写真家をふくむ沖縄の代表的文化人を前にアピールしてみたのだった。
 さらにその日の二次会で飛び入り参加された喜納昌吉さんと意気投合し、自身の音楽家人生と重ねあわせながら沖縄の歴史と現状を総括するような語り下ろし本を刊行しようということになり、その後、『沖縄の自己決定権』という本となって結実した。
 そういう稔りの多い訪沖の機会であったが、じつはそれだけではなかったのである。喜納昌吉さんと話している二次会のその場にいて刺戟的な発言をされたのが初対面の知念ウシさんだった。そのときの話をぜひ「未来」に書いてほしいという依頼を受けて書かれたのが、本書の第一回原稿「基地は本土へ返そう」である。この回をスタートにして、リレー連載というかたちでヤマトでは聞こえてこない沖縄からの生まの声をレポートしてもらうことになった。ここでも仲里効さんに協力してもらって適切な人選を推薦してもらった結果、與儀秀武さんと後田多敦さんが知念ウシさんともども三か月に一回という約束でそれぞれの観点や立場から最新の沖縄情報を書いてもらうことになった。二年目にはいるところで、事情があって後田多さんに代わって桃原一彦さんがあとを受けてくれることになって、とりあえず二年間二四回分の原稿が集積されたので、とりあえず単行本としてまとめさせてもらうことにした。
 この二年のあいだに民主党政権の混迷や沖縄問題対応の拙劣さから首相が二度も交替するという激動がつづいており、その渦中にはいつもオキナワがある。東日本大震災が起こったあとでも在沖米軍が「トモダチ作戦」と称して災害地救助の名目のもとにさまざまな軍事シミュレーションをおこなったりしているのも、沖縄人からみればじつにうさんくさい事情がある。本書ではそうした指摘もなされている。いずれにせよ、沖縄からの厳しい批判の声をヤマトの政府はもちろん、日本人それぞれが襟を正して聞くべきなのである。日本への「復帰」四〇年をまえにして本書が刊行される意義はそこにある。

 二〇一二年三月
 未來社代表取締役 西谷能英

 *これはこの四月に刊行予定の知念ウシ・與儀秀武・後田多敦・桃原一彦著『沖縄からの報告(仮)』の「まえがき」として書かれたものの下書きである。正式書名は現在のところまだ決まっていない。(2012/3/21)

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