26 書名トレードのドタバタ

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 このところ新刊の書名に苦労することがつづいている。
 2月に刊行した湯浅博雄さんの『翻訳のポイエーシス――他者の詩学』もさんざん迷ったあげくにわたしが思い切って提案して湯浅さんの了解を得たものだったが、これは内容的に言って副題もふくめてぴったりだったと自負している。湯浅さんの性格からやや説明的になりすぎるのをかなり強引に断定的なタイトルになった。わたしが創ってきたポイエーシス叢書にもちなんだ書名でもあり、わたしはとても気に入っている。これなどはあとづけで付けた書名にしては珍しくうまくいったほうである。
 3月に刊行した守中高明さんの『終わりなきパッション──デリダ、ブランショ、ドゥルーズ』は、当初、守中さんが希望した書名が『パッション』だったのだが、未來社にはジャック・デリダの同名の翻訳があり(これは原題のまま)、同じ出版社から同題の本が出るのはまずいということから再考してもらって、今回のものに落ち着いた。これは当人が決めてくれたのであり、いいタイトルだと思う。
 さて、いま難航中の書名問題がある。PR誌「未来」にリレー連載してもらってきた「沖縄からの報告」(前項参照。執筆者は知念ウシ、與儀秀武、後田多敦、桃原一彦の四氏)をこの4月に単行本にまとめるにあたって、連載タイトルをあまりに安直に付けてしまっていたため、まさかこれをそのまま書名にするわけにもいかず、とはいえ連載が本になったことをわかってもらうようにするにはその痕跡を残さねばならず、ハタと困ってしまったのである。知念ウシさんや與儀秀武さん、はてはこの連載の企画協力者でもある仲里効さんにまで知恵を借りる始末。
 わたしのイメージとしては「沖縄からの報告」をサブタイトルに残して、できればウチナーグチ(沖縄語)でわりとヤマトゥ(日本人)にもわかりやすそうなコトバがあればいいな、ということで検討してみたが、内容にそぐわないものばかりで、あとはあまりにもヤマトゥに理解が(いまの段階では)むずかしいコトバになってしまい、初志貫徹できず。いまにいたるも(すでに原稿はきょう印刷所に入稿してしまった)決着していない。なにを隠そう、窮余の一策として、ほぼ連続して刊行される予定の仲里効沖縄文学評論集に予定していた『闘争する境界』をトレードしてもらうことにしようかと思っている。執筆者にメールでこの旨を伝えて反応を待っているところであるが、いまのところ直接確認をとった知念ウシさん以外からの返答はない。どうやらこれでいけるかもしれない、という現状である。まったく前代未聞の書名トレード話だが、書名と内容をマッチさせ、今回のように執筆者が4人いて、それぞれの個性がちがうのをまとめつつ共通性を探るということになると、なかなかうまくいくわけではない。さいわいなことに、このリレー連載は沖縄の若手論客を中心にしてきただけに沖縄人のヤマト政府および日本人への不信感、批判精神はほぼ共通のものがあるので、こうした括りかたが可能になった。サブタイトルには「復帰後世代の沖縄からの報告」としたのはウシさんの提案だが、これは内容を明快に伝えていると思う。
 ところで、書名トレード元の仲里本には仲里さんのもともとの希望でもあった『悲しき亜言語帯――沖縄・交差する植民地主義』を付けることになった。すでに書店には元の名前で新刊案内を送ったばかりで恐縮のかぎりだが、こうして書名問題がなんとか解決しつつあることの報告である。(2012/3/26)

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未来の窓 1997-2011

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