30 坂手洋二戯曲『普天間』の刊行にあたって

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 きのうは坂手洋二さんとの企画について書くつもりが、途中からマスコミ批判になってしまった。坂手さんの戯曲『普天間』の仮ゲラを渡し、いろいろ打合せをしたのだが、この戯曲のタイトルをめぐって坂手さんはけっこう緊張しているという。というのは、やはりヤマトンチューが沖縄の、それもいま政治問題としても渦中にある「普天間問題」をタイトルとする作品を本として出すことの心配があるらしい。
 わたしも青年劇場での上演台本を読み、それを修正した出版用原稿の通読をしたところだが、坂手さんも言うように、セリフのウラはいろいろとってあるので間違いはないがウチナンチューがどのように受け止めてくれるかということには自信がないとのこと。それは出版人としてのわたしもいつも痛感していることである。ヤマトンチューが沖縄のことについて本を出すということはある種の部外者的介入であるという側面は免れないところがある。そのことに無自覚な著者や出版者は論外としても、十分に意識的なはずの著者や出版人がそれでもくぐり抜けなければならないハードルはけっして低くない。
 その意味で今回の坂手洋二による戯曲『普天間』がウチナンチューがどのように受け入れられるか、おおいに気になるところである。しかしヤマトンチューによるオキナワ本がウチナンチューにも理解され、受け入れられるとともに、ヤマトンチューの事実認識、意識変革に結びつくものでないかぎり、出版される意味はない。わたしが読むかぎり、沖縄国際大学での米軍ヘリ墜落事故とその後始末にかんする米軍の隠蔽処理に始まって、「日米地位協定」にもとづく日本政府側の無力をはじめ、現在の普天間飛行場をめぐる諸問題は的確に主題化されているように思える。そのかぎりにおいて戯曲『普天間』は十分な問題提起になっていると思う。
 坂手さんには「推進派」という徳之島への基地移転(民主党鳩山政権時代の普天間基地移転代替案)をめぐる現地取材にもとづく戯曲もある。戯曲『普天間』につづいてできれば刊行してほしいという坂手さんの意向にはできるだけ添うようにしたいと思うが、それはたんに戯曲『普天間』との関連性だけではない。坂手さんの構想には韓国のチェジュド(済州島)と沖縄を関連させた戯曲が準備中であり、さらにはフクシマと沖縄というテーマも構想中であるという、その想像力の展開に期待したいからである。言うまでもなく、そこには時代の要請に真摯に応えようとする精神のありかたがみとめられるからである。(2012/4/7)

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