32 連載〈沖縄からの報告〉が『闘争する境界』としてまとまる

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 知念ウシ・與儀秀武・後田多敦・桃原一彦著『闘争する境界――復帰後世代の沖縄からの報告』が未來社からきょう刊行された。これは本ブログの「26 書名トレードのドタバタ」でも触れた本のひとつで、PR誌「未来」にこの2月までの2年間にわたってリレー連載された4人の著者によるレアな沖縄の現状報告集である。細かい経緯はこれも本ブログの「25 『沖縄からの報告(仮)』はじめに(下書き)」で書いているように、2010年1月にわたしが沖縄での仲里効『フォトネシア』出版祝賀会に参加したおりの二次会で知念ウシさんに出会ったことに端を発している。前述のブログ「25」は書名を変更した以外はとくに訂正することもなく、今回刊行された本の巻頭に「まえがき」としてそのまま掲載させてもらった。
 なにしろ「未来」での連載がなんの工夫もない「沖縄からの報告」だったから、そのまま書名にするわけにもいかず(サブタイトルに痕跡を残したが)、土壇場で仲里効さんの近刊の沖縄文学批評集に予定していたタイトルをトレードさせてもらってなんとか格好をつけたというかたちになった。さっそくきょう紀伊國屋書店から書名にかんする問合せがあったようで、新刊案内を出してしまったあとでのトレードだから書店現場には迷惑な話であるが、ご寛恕いただきたい。ともあれ、この書名バナシについては本書の「あとがき」で知念ウシさんがご丁寧にも言及してくれて、友人に「トウソウする~」という書名の話をしたら当然「逃走する」でしょ、と言われたらしい。わたしがウシさんに電話で最初に提案したときも「逃走する沖縄」ですか、といわれて一瞬まさかと思ったぐらいであるが、どうもウチナンチューには「基地問題」からはいい加減「逃走」したいという思いがあるようだ。でも闘っているんだからやっぱり「闘争」でしょ、ということで一件落着したというオチがある。まあ、おもしろい本だからぜひ読んでみてください。
 未來社の沖縄本は4月に入ってすぐ沖縄写真家シリーズ〈琉球烈像〉の中平卓馬写真集『沖縄・奄美・吐カ喇1974-1978』が出たが、さらに昨日には宮本常一の『私の日本地図8 沖縄』も刊行された。これはわたしが編集にかかわっているものではないのだが、じつにタイムリーであった。このほかにもすでに本ブログの「14 沖縄関連本の連続刊行」でも予告しておいたように、坂手洋二戯曲『普天間』と、さきほどの仲里効さんの〈沖縄批評三部作〉とわたしが名づけたということになっているところの第三作、沖縄文学批評集『悲しき亜言語帯――沖縄・交差する植民地主義』が5月に、沖縄写真家シリーズ〈琉球烈像〉の残りの2巻、伊志嶺隆写真集『光と陰の島』と山田實写真集『ゼロに萌える』が6~7月にかけて刊行される。このほかに知念ウシ評論集と高良勉文学論集『言振り』も夏から秋にかけて刊行予定である。
 この5月15日に「復帰」40周年を迎える沖縄にあわせて、いまヤマトのマスメディアもいろいろそれにあわせた番組製作や広告特集などが目白押しであり、こちらにもいろいろ問合せや取り持ちの依頼など、また出広依頼などがつづいている。こうした盛り上がりが例によって一過性のお祭り騒ぎに終わらないことを祈りたい。むろん沖縄ではそんなことがありえないのは、米軍に代わる自衛隊の進駐問題や高江のヘリパッド問題、また昨今の北朝鮮によるミサイル発射(失敗)騒ぎや、さらには石原慎太郎東京都知事による尖閣諸島の買収工作案など、沖縄にとっては目に余る問題が次々と生じていてお祭りどころではないはずだからである。
 そんななかで未來社の沖縄本はともかくも次々と刊行される予定だ。これらの本が沖縄の現状の打破にすこしでも役立つことを念じている。(2012/4/20)

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