41 新藤兼人さんの思い出

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 ドキュメンタリー映画の巨匠、がお亡くなりになりました。100歳という長寿を全うされましたが、まだまだお元気だったようで残念です。最近はお会いすることもないままになってしまいました。
 わたしが新藤さんの本を作らせてもらったのはなんと1978年のことで「竹山ひとり旅」という津軽三味線の名手、高橋竹山の映画のもとになるシナリオを含む撮影記録を収録した『映像ひとり旅――映画「竹山ひとり旅」創造の記録』でした。赤坂にあった近代映画協会に何度も足を運んでゲラの校正やら打合せやらで新藤さんほかスタッフの方々とお会いしたことが思い出されます。そのころ新藤さんは六十代半ば、わたしは駆け出しの編集者でまだ二十代。その撮影の厳しさは「シンドイカネト」とあだ名をもらっていたように、独立プロという所帯を切り盛りしながら映画を撮りつづけた新藤さんならではのもので、あるとき撮影現場を見せてもらえることになり、ベテラン俳優が新藤さんに何度もダメ出しされてしょげているのを見て、これは大変だなとひとごとながら思ったものでした。
 その後、新藤さんに気に入られたらしく、映像論集を出そうということになり、翌1979年にこれまで書かれたエッセイをまとめて『フィルムの裏側で』を刊行しました。映画にまつわるさまざまな仕事師たちとの交流や映画製作の機微に触れた文章が集められています。さらにこれまでのシナリオを全部集めて新藤兼人全シナリオといった企画も出されたように記憶していますが、それは実現しませんでした。
 あらためてご冥福を祈ります。(2012/5/31)

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未来の窓 1997-2011

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