44 東京外国語大学でシンポジウム「沖縄『復帰』40年――鳴動する活断層」開催の案内

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 この7月14日に東京外国語大学府中キャンパスにて仲里効さんを招いてシンポジウム「沖縄『復帰』40年――鳴動する活断層」が開催される。主催者の東京外国語大学大学院の西谷修さんからくわしく聞いていたのだが、ようやくチラシが届いた。5年前に行なわれたシンポジウム「沖縄・暴力論」の継続版だ。このシンポジウムの内容をふくんで増補された『沖縄/暴力論』が西谷修・仲里効共編でその後、未來社から刊行された。
 今回は沖縄「復帰」40年ということであらためて沖縄の「復帰」の問題を考えようという趣旨である。しかも第一部の仲里効の基調講演のあと、第二部は「『悲しき亜言語帯』と『自立』をめぐって」という総括討論が予定されている。質疑応答形式でそれぞれ原稿を事前に準備してもらい、その概要を口頭発表、仲里さんが応答するという形式が予定されている。質疑の予定者は土佐弘之(国際政治社会学)、崎山政毅(ラテンアメリカ)、中村隆之(クレオール文化)、中山智香子(社会思想)、真島一郎(国際政治社会学)、米谷匡史(東アジア)の6名。5月下旬に刊行された仲里さんの『悲しき亜言語帯――沖縄・交差する植民地主義』が論題にあてられる。沖縄の文学的言説(小説、詩、戯曲、エッセイ)を、沖縄といういまだ植民地的要素から脱却しきれていない独異な地政のもとにおかれた言説群にたいしてポストコロニアルの批評的視点とウチナーンチュの立場から徹底的に読み抜き、原理的な沖縄文学論として完結させたこの本は沖縄文学論としてこれまでに書かれ得なかった最高度の達成であることは(おそらく)間違いない。西谷修さんの見解も同じである。もしかすると今後も二度と書かれ得ないかもしれない、と。
 このシンポジウムでは第一部の「『復帰』40年を考える」では主催者の西谷修さんが「擬制の終焉」と題してプレゼンテーションをおこない、それを受けて仲里さんの「思想の自立的拠点」という基調講演になる。ことし3月に亡くなった吉本隆明の書名にちなんだタイトルを二本冠するのもどこか象徴的な感じもあるが、沖縄の日本「復帰」という〈擬制〉と、そうした日本(ヤマト)の仕組んだ沖縄の植民地環境の永続化からの〈自立〉を、どういう論理で展開することになるか、期待したいところである。そのためにも刊行されたばかりの『悲しき亜言語帯』が重要な視点を開示しているはずだ。
 まことにタイムリーに出されたこの『悲しき亜言語帯』(もちろん、「復帰」40年にあわせようとしたので偶然ではないのだが)は沖縄の「復帰」40年の内実を言語の内側から、言説の発動する場所や背景をも広角的にとらえるなかから、さまざまな文学テクストの可能性と意味の射程を探究し確認しようとしたものである。このイベントをひとつのきっかけにすこしでも広く知られるようにしたい。

 なお、シンポジウムの時間と場所は以下の通り。(予約不要、入場無料)
 時:7月14日(土)14時~17時半(開場は13時半)
 場所:東京外国語大学(府中キャンパス)研究講義棟226教室
 開始にあたって13時半から「Condition Delta OKINAWA」の上映があります。

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