51 沖縄写真家シリーズ〈琉球烈像〉がついに完結

| トラックバック(0)
 きのうの朝、沖縄写真家シリーズ〈琉球烈像〉全9巻最終回配本の第1巻山田實写真集『故郷は戦場だった』の見本がとどき、このシリーズも三年ごしでついに完結させることができた。監修の仲里効さん、倉石信乃さんの全面協力とそれぞれの巻の解説者の方々の応援、そして装幀と本文レイアウトに携わってくれたデザイナーの戸田ツトムさん、さらには厄介な注文に財政的配慮もふくめて協力してくれた萩原印刷と東新紙業の方々には感謝のことばもない。こういうひとたちの力によってわたしの無謀とも思えるこの写真家シリーズの刊行もなんとか完結までほぼ順調に進めることができたのだった。
 これにくわえて売りにくい大型変型判の写真集を揃えてくれた各書店、とりわけ沖縄県での販売に力を発揮してくれたトーハン沖縄営業所、また書評や記事でこのシリーズの存在を知らしめてくれた「沖縄タイムス」「琉球新報」の地元2紙のほかに、さまざまな記事を掲載してくれたマスコミ各紙にあらためてお礼を述べたい。
 この仕事の企画から進行にかんしては、わたしの『出版文化再生――あらためて本の力を考える』(2011年、未來社刊)に収録されたPR誌「未来」の連載コラム[未来の窓]で何度も触れてきた。古くからの出版界の知人などは「西谷が書くのは沖縄ばかり」と冷やかされもしたほどだが、実際はそれほどでなくともたしかにこの写真家シリーズについてはそのつどの思いをメッセージとして(誰への?)送りつづけてきた。それがいよいよ完結したのだから、刊行までの前半戦は終了し、これからはこれをいかに広めるかという後半戦に入ることになる。
 この写真家シリーズを刊行すること自体が、現今の日本社会のなかでの〈沖縄問題〉をもっとも根底から支える内実をイメージとして提出することによって、沖縄の現実と歴史を理解していくことにつながるとわたしは信じている。米軍基地の問題にしてもたんに政治問題としての決着を急ぐだけでなく、沖縄社会の深い理解なくして安易な政治力学のなかで処理されてはならないからである。だからこの写真家シリーズのなかにあるのは、沖縄のさまざまな現実や生活であり、なかには当然のことながら基地問題や米軍にふれるイメージもふくまれるが、それらはたんなる政治的メッセージとして定着されているわけではない。そうしたリアルな現実をふくんだ生活の全体像を見てほしいと思う。このシリーズが沖縄ばかりでなく、広く知られ読まれて(見られて)いくことこそが、〈沖縄問題〉の真の解決にもつながっていくとわたしは心底から期待しているのである。だからこそこのシリーズの刊行とその販売こそ、出版が闘争であるというわたしの思いにダイレクトにつながるのである。後半戦の戦いはいよいよこれから始まるのである。(2012/9/29)

トラックバック(0)

トラックバックURL: http://www.miraisha.co.jp/mt/mt-tb.cgi/371

未来の窓 1997-2011

最近のブログ記事 購読する このブログを購読