II-12 いまや内乱状態の憲法危機――仲宗根勇『聞け!オキナワの声』の緊急出版の意義

| トラックバック(0)
 安倍政権の集団的自衛権を認める閣議決定から始まり、戦争法案である安保法制制定のもくろみはそれ自体、現日本国憲法に照らしてあきらかな憲法違反であり、日本をアメリカに追随する戦争国家に仕立てようとする陰謀であることは、いまや国民のあいだでもはっきりと認識され、反対運動も激化してきている。小選挙区制による一票の価値の不平等と野党乱立の隙間をぬって選挙権者の二割にも満たない投票数で多数派を占めているにすぎない国会を我が物顔で自分の思い通りになると錯覚している安倍晋三を中心とする極右勢力の一派は、いまや世界各国の警戒や軽蔑をも知らぬ存ぜぬの鉄面皮で政治悪のかぎりを尽くしている。
 沖縄県名護市辺野古への米軍新基地建設を沖縄県民の民意をまったく無視して暴力的に強行しようとするのもその強権政治の現われである。というより、そこにこそ集中的に現われる軍国主義、植民地主義の横暴はいまの憲法改悪=軍国主義化路線の本質そのものである。その辺野古の新基地予定地の現場でいまいったい何が起きているのか、本土のマスコミはほとんど報道しないか歪めて報道している。そこで日常的に体を張っているひとたちの動きはあまり知られていない。その辺野古の現場に立ち、元熱血裁判官という立場から憲法論を軸に安倍一派の「憲法クーデター」のからくりを暴き、その強権的基地建設を実力阻止にむけてひとびとを鼓舞し、理論的にリードする役割を背負っているのが仲宗根勇氏である。その仲宗根氏の辺野古基地ゲート前での憲法論的アジ演説と憲法講演を集めた新刊『聞け!オキナワの声――闘争現場に立つ元裁判官が辺野古新基地と憲法クーデターを斬る』がいよいよ刊行される。
 仲宗根氏によれば、安倍晋三一派は、憲法遵守義務を怠るどころか憲法改悪にむけて国会審議もろくにおこなわず強行採決などの無法行為によって、実質的に国会を乗っ取り、大日本帝国憲法よりなお悪質な反動的憲法を実現しようとする点において国事犯である。現憲法では、九十九条に「天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負う」と明記されている。その義務を守らないばかりか、自分たちに都合のいい憲法改悪をもくろむという点において首相みずからによる憲法にたいするクーデターであり、すなわち日本はいま事実上の内乱状態に近い。辺野古で安倍一派が実現しようとしているのは、まさしくそうした権力乱用による内乱行為である。仲宗根氏によれば、刑法七十七条で「日本国憲法の基本秩序を破壊する意図をもって暴動をやった場合には内乱罪として死刑または無期禁錮にする」となっているそうである。もし辺野古で沖縄県民の民意に反して基地建設強行をしようとすれば、憲法で保障された「表現・思想の自由」を暴圧しようとする行為となり、これは安倍一派にこそ内乱罪の適用がなされるべきである。事態はいまやここまできてしまったのである。安倍晋三はすくなくとも戦後最悪の首相であり、そもそも知識や教養のうえでも首相の器でないことはかのアドルフ・ヒトラーと双璧をなす人物にすぎない。
 安倍晋三のやろうとしていることは、およそ民主主義国の総理大臣としてのレヴェルではない狂気の沙汰である。わたしがかつて書いたように、安倍には元A級戦犯の祖父岸信介の亡霊の恨みを晴らし野望を遂げようという長州藩的好戦主義、覇権主義の思いこみがこびりついており、やることなすこと妄想からきているものにすぎない。
 仲宗根勇氏のこの新著は、昨年刊行した前著『沖縄差別と闘う――悠久の自立を求めて』のあと、憲法論の視点から安倍一派の憲法改悪の妄想を批判的に検証する本を依頼していたものの、現場闘争もあってなかなか実現できそうもなかったところ、たまたま辺野古ゲート前でのアジ演説が録音されていることがわかり、それを所望するなかから実現したものである。ここには現場ならではの圧倒的なライブ感覚があるだけでなく、そのつど憲法論的な視点からの講義を意図してなされたものであったから、多少のダブリはあるものの、そのときどきの緊急課題に対応する戦略的・戦術的な抵抗方法の開示や理論的現状分析があり、まことに臨場感のある内容なのであった。すぐにこれを起こし、あわせて憲法にかんする依頼講演三本とともに超緊急出版にこぎつけたしだいである。
 安倍政権が何を企んでいるのか、翁長県知事に一か月休戦を申し出て、その間になんとか集中協議と称して県知事を抱き込もうと画策しているが、前知事仲井眞を籠絡したようにはいかないのは計算違いなのか、たんなる浅知恵のなせるわざなのか。そしてこの九月九日にこの「休戦」が終了したあかつきには、どんな企みがあるのか。もし休戦明けに問答無用の基地建設工事強行の策に出るとしたら、それこそまさに「内乱=内戦状態」となろう。そんなこともやりかねないのがいまの安倍強権政治なのである。これは憲法危機そのものであり、国民全部を敵にまわした「第二の戊辰戦争」となる。
 安倍晋三ごときに日本がいまや崩壊寸前に追い込まれている。このことに危機感をもたない人間は第二次世界大戦前の無知無能の、なすがままに支配された日本人の再来にすぎない。
 本書が刊行されるのは九月十四日。それまでに安倍の狂気の沙汰が及ばないことを祈るしかない。なお、仲宗根勇氏の熱烈なアジ演説の一部は、本に付けたQRコードの読み取りからも、未來社ホームページの本書のページ(http://www.miraisha.co.jp/np/isbn/9784624301217)からも聞くことができるようにした。すでにホームページからは聞くことができるようになっているので、アクセスしてその圧倒的な現場からの声に耳を傾けてみてほしい。

トラックバック(0)

トラックバックURL: http://www.miraisha.co.jp/mt/mt-tb.cgi/476

未来の窓 1997-2011

最近のブログ記事 購読する このブログを購読