偏執的編集論4:編集タグとは割付作業である

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(間奏曲)

F君 そろそろ「季刊 未来」用の次の原稿の時期がきましたが、進んでいますか。
偏集者(以下、略して偏集者) それがね、ある程度は予測していたんだけど、君も知っているとおり、日頃の忙しさに追われて時間がまったくない現状で、まだ切迫していない原稿の準備なんてものはできるものじゃない。それでも責了まであと四日ともなると、もう準備しなきゃならないよね。締切なんてとっくにすぎても、ほかのひとの原稿の処理に追われ、単行本編集の仕事だってあるけど、そうは言っていられない。何ページ分が必要かだいたいわかってきたので、いま書きはじめたところなんだ。まあ、この編集論だってどれだけのひとが読んでくれるものかわからないけど、肝腎の編集者が読んでくれないとおもしろくないよね。それでも取引先の社長が関心もってくれて、君にもいろいろ教えてもらいたいなんて言ってくれてるみたいじゃないか。
F君 うなんです。それでちょっと勉強しておかないと。
偏集者 なんだかんだ言っても、こういう仕事は実践が第一だから、わたしの仕事ぶりを見ているだけでも勉強になっていると思うよ。ちょっと気の毒だけどね。そんなわけで前回の続きを書こうと思うんだが、いろいろいっぺんに書いても、覚えきれないだろうから、ポイントはわかりやすく説明し、繰り返しも必要があると思っているんだが。
F君  それがいいと思います。
偏集者 じゃ、しばらく引っ込んでいていいよ。


 前回述べたように、本の原稿のテキスト処理にあたって目次をしっかりと確認することは、まず編集者がする最初の仕事である。こうした処理をあらかじめすませてしまうことで、全体の見通しがつきやすく、データ処理もしやすくなる。目次をなによりも優先するということは全体をより適切に配置し、それにあわせてレイアウトなどにも一貫性を与えることができるという意味で、今後の作業の基本となるのである。
 テキスト編集にあたっては、本ごとにさまざまな特徴(個人の著書なのか編集本なのか、テキスト中心なのか図版や表、写真が入る本なのか、など)があり、配慮しなくてはならないことは多岐にわたるが、場合によってはその本には必要のない方法(技法)もある。そのことを承知のうえで、いわゆる編集用のタグ(編集記号あるいは印刷用の指定記号)のそれぞれについてここで網羅的にとりまとめておこう。こうした考え方は、デザイナーの鈴木一誌さんに〈ページネーション〉という概念があり、デザインと編集では立場はちがうが、わたしのページ設計の基本と通ずるところがあることもあわせて確認しておこう。(鈴木一誌『ページと力――手わざ、そしてデジタルデザイン』青土社、二〇〇二年、参照)
 編集タグの種類はいくつかある。いくらか煩瑣になるが、これは避けて通れない。これらは一覧表にして印刷所に渡し、変換テーブルとして準備してもらうことで、以後はこのパターンを踏襲するだけでよい。わたしの経験でも、かりにタグに一部ミスがあっても、印刷所が慣れてくれれば事前にこのミスをカバーしてくれることができる(もちろん、最初からそれをアテにしてはいけないが。)
 それにあらかじめ言っておけば、こうした編集タグについての説明とあわせて、その本のための書体(フォント)とサイズ指定、ページの行数と一行の字数、行間などを「組み指定書」としてそのつど印刷所に渡すことが必要になる。編集タグが入っていれば、紙の原稿にわざわざ割付のための赤字指定をする必要がない。言いかえれば、この割付をテキストファイル上でやってしまうのが編集タグなのである。慣れてくると、同じ指定作業は一括処理で効率化することもできる。ちなみに、わたしはその本の性格にあわせてそれぞれの一括変換用マクロを作成して事前にこれをパソコン上で走らせることによって、作業の大幅短縮=軽減化をはかっているが、その説明をするのは時期尚早であろう。
 とにかくまず原稿を読むまえにできるだけこうした編集タグ付け作業をすませておくほうがいい。そうするとことで、原稿をしっかり読むことに集中できるのである。そして原稿を読むなかでそれらの指定に変更する必要があれば、訂正すればいいのである。
 あらためて言えば、編集タグとは最後の最後に組み指定書を作成するまえの、本全体の骨組みの設計なのであり、基本構造をはっきりさせることである。

(1)編集タグのうちの主要なひとつが前項「3 目次は本の設計図である」ですでに紹介した見出し系である。大見出し、中見出し、小見出し、節や項をどう指定するのかということである。これには既述のように、HTMLタグと同じ<H1>......</H1>、<H2>......</H2>、<H3>......</H3>という見出しタグを割り付ける。その見出しの前後のアキはそれぞれの好みとバランス感覚で改行コードやスペースの入力で設定するのがよい。
(2)つぎにおこないたいのが引用文の処理である。
 文中に引用記号(カッコ類)とともに組み込まれた引用文はそのままでいいが、独立した(つまり前後が行変えされたり、ひとつのセンテンスになっている)引用文の場合は、もし強調したいなら、前後一行アキにし、字下げインデントをした形にするのがいい。この場合は引用文の最初に「<引用>」タグを入れ、文末に「</引用>」を挿入する。組み指定書に、このタグにはさまれた文章はたとえば全文2字下げと指定するだけでよい。改行は自動的にインデントしてくれる。
 引用が複数段落にわたる場合は、各段落の最初に全角スペースを入れるだけで折り返しはインデントされる。逆に詩の引用などの場合は行頭を字下げせず、折り返しがある場合はさらに一字インデントして字下げする。こうしたことはあらかじめ組み指定書に記述しておくだけでいい。
 引用文の特殊な形態である、文頭などに置かれるエピグラフを設定する場合は「<エピ>」......「</エピ>」とする。この場合は書体と書体サイズ、一行の行数、行間などを独自に指定する必要がある。
(3)本の体裁にかんする設定をとりあえず先行的に記述していくが、まずはページ単位の指定としては【目次扉】【本扉】【中扉】など、わかりやすく表示することができる。これらは必然的に独立した一ページを構成するものである。【改丁】【改頁】の指示を入れるのもよい。こうしておけば、印刷所のほうで改ページしてくれる。なお、わたしが印刷所に渡す入校用仮ゲラの場合には、こうした指定だけではなく、「/*改頁*/」という独立した一行の文字列の入力で印刷時にその箇所で改ページが実現できるプリント・ユーティリティ(たとえばWinLPrt)を使っているので、入校原稿自体がすでに改ページされている。
 さらには特定の文字列を中揃えしたり下揃えしたい場合もある。その場合にはわたしは
 中揃え=<C>......</C>
 下揃え=<地ツキ>......</地ツキ>
などの編集タグを使っている。
 このほか、もし図版や表、写真などを挿入したい場合には、たとえば【このあたり図1を1ページ上部半分に入れる。文字組み込み】などといった指定をして、該当する対象を別途にサイズ指定をして入校時に添付する。
 いずれにせよ、これらの編集タグは、印刷所との連携でページ組みにさいして指定された処理が終われば、削除される。わたしはこれを「透体脱落」と呼んでいる。

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