15 クリップボード・ユーティリティの便利さ:ToClip, QTClip

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 通常、パソコンのクリップボードはコピーないしカットした単語あるいは文字列をひとつしか記憶できない。つまり新しく単語あるいは文字列をコピーないしカットすると、以前のものは上書きされてしまう。いくつかの記号や単語を不連続に何度も使うような場合、そのつどコピー元を探してコピーし直さなくてはならないようでは、効率は悪いしストレスもたまるだろう。それならそのつど入力してしまったほうが早いぐらいのこともある。
 そうしたクリップボード機能の拡張をしてくれるのがここで取り扱うクリップボード・ユーティリティである。これらはコピーしたりカットした文字列をそのつど上書きせずに一定数クリップボードに記憶しておくツールである。
 秀丸エディタのように独自にクリップボード履歴機能をもっているテキストエディタもあり、最大合計で999KBまでの履歴をもつことができる。「編集」メニュー~「クリップボード履歴」を選択し、必要な単語を選択し「取り出し」ボタンを押すとクリップボードのトップに置かれるようになるので、あとはペーストするだけで済む(*)。この機能を使うには初期設定で「秀丸の常駐」と「クリップボードの履歴を取る」機能をオンにしておく必要がある。ただし、この機能はパソコンを終了してしまうとすべて消去されてしまう。
 その意味で、クリップボード・ユーティリティには保存(登録)機能があるものが望ましい。Windows系にはいろいろあるが、圧倒的に使い勝手がいいのは寺尾進氏作のフリーウェアToClip for Windows(入手先はhttp://www5f.biglobe.ne.jp/~t-susumu/)である(**)。このユーティリティが便利なのは、クリップボード履歴としては50個までだがデータ保存ができるのと、重要なデータは「テキスト編集」画面でデータを選択し、「編集」メニューから「登録テキストへ追加」を選ぶことによって履歴データから別枠で100個まで保存することができることである。これらはパソコンを終了させても再起動時に読み込ませることができるので、いつでも使うことができる。使い方としては、モニタの[スタート]ボタン以外の3つの隅にマウスをあてるか、ショートカットキー(通常はAlt+Qキー)でクリップボード履歴か登録データ一覧をポップアップさせ、必要なデータを選択するだけで画面のカーソル位置に貼付することができる。(なお、このためにはタスクトレイのToClipのアイコンを右クリックし、「貼り付けモード」がオンになっている必要がある。)決まり文句や編集用の各種記号(わたしの場合は編集用タグ)などを登録しておけば、面倒な記号類をわざわざ入力することもないし、うっかりした入力ミスも免れることができる。不要になったデータは「テキスト編集」画面で削除すればよい。
 もうひとつ紹介しておきたいのが、簡単で軽快なQTClip(フリーウェア)である。これは新井健二氏作の傑作QXエディタ(シェアウェア)の付属品として単体でも使えるユーティリティ(入手先はhttp://www2k.biglobe.ne.jp/~araken/qtclip.htm/)である。これはToClip for Windowsに比べると使い勝手がやや落ちるが、ToClip for Windowsがまれに起動時の読み込みに失敗する不具合があってせっかくのデータをクリアしてしまうことがあったりするので、そのときのバックアップとして使っている。タスクトレイのアイコンをクリックすると開かれるQTClipの画面は上下2つに分かれていて、コピーしたりカットしたりすると下のクリップボード履歴欄に上から保存され、そのいちばん上にあるものが即利用可能なデータとなる。2番目以下にあるデータはダブルクリックすることで最上位になり、そのままペーストなどで使えるようになる。またこの履歴欄のなかから特定のデータを選択して上の欄にドラッグ&ドロップすると登録される。これはハードディスクに記憶され、ToClip for Windowsと同じように、パソコンを終了させても再起動時に読み込み直されるので、いつでも使えるようになるのである。
 これらのクリップボード登録データを再起動時に読み込ませるには、「11 『スタートアップメニュー』で最小限の起動をしておく」で記述したように、これらのクリップボード・ユーティリティのショートカットを「スタートアップ」フォルダに入れておく必要がある。
 これらのクリップボード・ユーティリティは同じ単語や文字列をよく使う原稿執筆や編集作業にきわめて簡単で有効なツールである。ATOKの単語登録とあわせて使いこなせれば原稿入力や編集作業のスピードアップに役立つだろう。しかしこのクリップボード・ユーティリティはとりわけ編集処理をするうえで役に立つもので、編集者には必携のツールであることは認識しておいてほしい。いちど使い込んだら二度と手放せないきわめて便利なツールなのである。

[ToClip for Windowsの設定の詳細]
[オプション設定](タスクトレイのアイコンを右クリックして「オプション」を選択)
★[履歴]タブ
 「履歴機能を使用する」:オン
 「起動時に履歴をクリア」:オフ
 「履歴に残す件数」:最大の50に設定(推奨)
 「メニューに表示する件数」:最大の50に設定(推奨)
 「メニュータイトル文字数」:40に設定
 「タイムラグ」:1ミリ秒を選択(推奨)
 「表示順序」:昇順(推奨)
 「表示位置」:常に後尾(推奨)
 「折り返し表示する」:オン
 「折り返す件数」:10(推奨)
 「重複データを削除する」:オン
 「クリップボードへ送った履歴を先頭へ移動」:オン
 「MS-WORDのデータは履歴に残さない」:オン
 「MS-Excelのデータは履歴に残さない」:オフ(オンも可)
★[ポップアップメニュー]タブ
 「ホットキー:左クリックポップアップ」:Alt+Q(推奨)
 「ホットキー:右クリックポップアップ」:なし
 「左メニュー表示位置」ラジオボックス:キャレット上
 「貼り付け時キャレットを元の位置へ戻す」:オン
 「履歴をメインに、登録テキストをサブで表示する」:オフ(オンも可)
★[オートポップアップ]タブ
 「左メニューをオートポップアップする」:オン
 「対象ウィンドウ最大化時、左右上隅はポップアップしない:オン
 「ポップアップする位置」:左上隅、右上隅、右下隅をオン(スタートメニューの位置以外が可)
★[その他]タブ
 「タスクトレイのアイコンを左クリックした時の動作」:テキスト編集画面を開く
 「テキスト編集画面を開く」:Alt+1

(*)「その他」メニュー~「動作環境」設定の「ウィンドウ」~「ツールバー」の「ツールバー詳細」ボタンで「クリップボード履歴」ボタンをツールバーに割り付けるとこの操作がワンタッチでできる。
(**)寺尾進氏にはHTMLタグのためのクリップボード・ユーティリティとしてToClip Hyperというツールもあり、多機能である。

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このページは、未来社が2010年2月21日 16:30に書いたブログ記事です。

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