39 NHKの「経営計画」なるものの無内容(追加版)

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 詩の同人誌「アリゼ」147号で藤田修二という元毎日新聞記者が、NHK経営委員会が議決した2012年から向こう3年間の経営計画について書いている。
 それによると、2001年のETV番組「戦争をどう裁くか」で従軍慰安婦問題をめぐって、当時の政権与党、自民党極右の安倍晋三、中川昭一が政治的に介入し、番組の改竄、ねつ造をおこなった事件で、それに関与した内部の人間が内部告発してNHKに激震が走った事件がある。これについては未來社から刊行されている高橋哲哉『証言のポリティクス』が、当時の番組出演者として放送前の台本と放送内容が著しく改竄されているのを証拠にもとづいて具体的に検証している。こうした事件をふまえて「放送倫理検証委員会」の批判的意見が出されていた。
 マスメディアの世界では、〈内部的自由〉という問題があるとのことで、企業の経営者や上司が記者や現場の表現・言論・取材の自由にたいして抑圧的に振る舞うことへの抵抗を実現しうることを言うらしく、欧米のマスメディアではそうした抵抗の根拠としての拒否権をもっている。ところがNHKの今回の経営計画には活力ある職場づくり、すなわちそうした〈内部的自由〉をどのように担保していくのかという問題への言及はまったく見られなかったという。《考えてみれば、経営委員の中にメディアや「表現の自由」についての専門家は一人も含まれていない。結果もむべなるかな。》と藤田は最後に書いている。
 こうしたマスメディアの「公共性」をタテにとった経営的・政治的抑圧はなにもNHKだけでなく、ほとんどすべてのマスメディアに現在はびこっている現象ではないだろうか。大新聞も同罪だ。へたをすると、その抑圧構造が末端にまで行き渡っている場合がある。ほとんどアメリカのジャパン・ハンドラーの言いなり、指図通りに動いているいまの日本の政治、メディア、官僚、大企業、御用学者の一体化した反動ぶり、無能ぶりを見るにつけ、このNHKの経営計画なるもののひどさは容易に想像できるのである。(2012/5/24)
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 ここまで書いたあとできょうの新聞によれば、NHKの経営委員会委員長をやっていた数土文夫なる男が辞任して東京電力社外取締役に専念するという。これまでNHK経営委員会委員長と東京電力の社外取締役の兼職は問題ないとしてきた当人も、これを任命した政府も兼職は規定違反ではないからまかり通ると思ってきたらしいが、経営委員会内部からも視聴者からも相当な批判があり、当人の「信念の問題」として辞職するという。ふざけた話だ。NHKと東電の二股をかけていたような奴がNHKの経営改善などできるはずがなかったのである。聞くところによれば、福島原発当時の最高責任者であった勝股元会長の後釜に座る可能性もあったという人間だ。こんな人間がNHKの経営改善に役立つわけがない。それどころか東電のしたいことを全国放送するNHKという構図ができていたことになる。マスコミが東電とつるんでいたことはこれでも明らかになったわけである。(2012/5/25追記)



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