ホッブズの哲学体系
「生命の安全」と「平和主義」
ノルベルトボッビオ 著
田中浩 中村勝己 千葉伸明 訳
16世紀の大思想家トマス・ホッブズの哲学の全貌を20世紀イタリアを代表する政治哲学者ボッビオが体系的に解読し、その思想の現代性を提示する。ホッブズ哲学が根底にもつ平和主義と市民社会論の見地から代表作『リヴァイアサン』はもとより『市民論』なども高く評価する。数多くのホッブズ論のなかでも出色の論集。ボッビオ晩年の著作の待望の翻訳。
序 文
著者の注記
第一章 自然法理論の概念モデル
第一節 モデルの諸原理
第二節 さまざまなテーマ
第三節 もうひとつのモデル
第四節 もうひとつのモデルの諸要素
第五節 自然法理論の概念モデルとブルジョア社会
第六節 家族と自然状態
第七節 自然法理論の概念モデル
第八節 ブルジョア家族
第九節 〔自然法理論〕への反対論
第一〇節 自然法の概念モデルの終焉
第二章 ホッブズの政治理論
一 諸著作
二 主要思想
三 方法論
四 人工的人間
五 自然状態
六 万人の万人にたいする戦争
七 正しい理性の指示
八 統一のための信約
九 主権は改変できない
一〇 主権は絶対的である
一一 市民法
一二 主権は分割できない
一三 教会と国家
一四 ホッブズとその批判者たち
一五 ホッブズ解釈
第三章 『市民論』入門
補論 『哲学者と法学徒との対話――イングランドのコモン・ローをめぐる――』入門
第四章 ホッブズの政治哲学における自然法と市民法
第五章 ホッブズと自然法論
第六章 ホッブズと部分社会
第七章 終りにあたって
補論 『ある博学なひとへの手紙という形をとって本人が書いた、マームズベリのトマス・ホッブズの評判、忠誠心、行状、宗教にかんする考察』
ホッブズ研究小史
一 ホッブズについての批判的研究史の起源と初期の頃の研究の発展
二 この三〇年間におけるホッブズをめぐる論争の諸テーマ
ホッブズについての三冊の本
解説 ボッビオのホッブズ論
訳者あとがき
ノルベルト・ボッビオ(Norberto Bobbio 1909-2004)
イタリアの思想家、法哲学者、政治思想史家。トリノ大学講師のあと、カメリノ大学、シエナ大学、パドヴァ大学教授を歴任。「イタリアの丸山眞男」とも言われるほど大きな影響力をもつ。主著に本書のほか、『イタリア・イデオロギー』『グラムシ思想の再検討』などがある。
・訳者略歴
田中浩(たなか・ひろし)
1926年生まれ。一橋大学名誉教授。法学博士、政治学・政治思想史。『田中浩集』(全十巻、未來社)をはじめ著書多数。シュミット、ミルトンほか訳書も多数。
中村勝己(なかむら・かつみ)
1963年生まれ。イタリア政治思想史。訳書にアガンベン『例外状態』(共訳、未來社)、ネグリ『戦略の工場』(共訳、作品社)、ボッビオ『光はトリノより』(青土社)など。
千葉伸明(ちば・のぶあき)
1970年生まれ。高崎経済大学大学院地域政策研究科博士前期課程修了。社会思想史。訳書にネグリ『戦略の工場』(共訳、作品社)など。