ダーチャと日本の強制収容所
望月紀子 著
ノーベル文学賞候補としてこれまで何度も名前があがっているイタリアの作家、詩人、劇作家であるダーチャ・マライーニ。民族学者の父・フォスコ・マライーニとともに一家で来日、2歳から9歳までを日本で過ごし、終戦までの約2年間、名古屋の強制収容所でのあまりにも苛酷な飢えや寒さを経験する。フェミニズム、68年の「異議申し立て」の旗手として時代を駆け抜けてきた作家の原風景となった《もうひとつの物語》。
はじめに
1 ダーチャ・マライーニと父と妹の著書と母のノート
2 マライーニ家の人たち
名前/祖父母/トパーツィア
3 小さな旅人
アデン―ボンベイ―シンガポール―香港/上海――ユダヤ人と人力車
4 日本
神戸/東京
5 札幌
北大の外国人教師と官舎/妹ユキの誕生とアイヌ部落/娘たちの病気/お金/札幌を去る
6 宮沢レーン事件
レーン夫妻と外国人教師たち/宮沢弘幸/逮捕
7 京都
桜と紅葉/青色のスカーフ/ダーチャの日本語とイタリア語/父に「恋した」/戦争の足音と
末の妹の誕生
8 「さようなら、京都」
日米交換船/ファシズムへの宣誓拒否/京都最後の日々
9 《もうひとつの物語》――天白の収容所
収容所のイタリア人/天白寮/シチーリアへの想い/飢え/春/人間としての尊厳と連帯/
《争奪戦》/ハンガーストライキと《ユビキリ》/トパーツィアの孤独
10 東南海地震と名古屋空襲
11 広済寺
山羊のこと/原爆投下そして終戦/解放
12 再会と帰国
宮沢弘幸との再会/帰国
13 その後のマライーニ家の人たち
小さい娘の言い分/さてトパーツィアは?
14 痩せっぽちの少女
『帰郷 シチーリアへ』/『ヴァカンス』
15 『ヴァカンス』後のダーチャ・マライーニの作品
おわりに
望月紀子(もちづきのりこ)
東京外国語大学フランス科卒業。イタリア文学。
主な著書:『世界の歴史と文化 イタリア』(共著、新潮社)、『こうすれば話せるイタリア語』(朝日出版社)。
主な訳書:オリアーナ・ファラーチ『ひとりの男』(講談社)、ダーチャ・マライーニ『メアリー・スチュアート』(劇書房)、『シチーリアの雅歌』『帰郷 シチーリアへ』『イゾリーナ――切り刻まれた少女』『別れてきた恋人への手紙』(以上、晶文社)、ナタリーア・ギンツブルグ『わたしたちのすべての昨日』(未知谷)、『澁澤龍彦文学館 ルネサンスの箱』(共訳、筑摩書房)ほか。