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書籍詳細

嘘の歴史 序説

嘘の歴史 序説

定価:本体1,800円+税

ISBN:978-4-624-93270-1

発行日:2017年2月15日

判型:四六判上製

ページ:106

Cコード:C0310

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ジャック・デリダ
西山雄二

ジャンル : 哲学・思想 >> フランス哲学

ジャンル : 哲学・思想 >> 現代思想

シリーズ : ポイエーシス叢書

〔ポイエーシス叢書70〕

晩年のデリダが1997年におこなった講演録。プラトン、アリストテレス、ルソー、カント、ニーチェ、ハイデガー、フロイトを参照しつつ、時代や文化によってことなる嘘の概念の歴史を問い、とりわけアーレントとコイレのテクストを読解する。意識的に嘘をつくことと知らずに間違うことの差異を明確にし、嘘の概念を脱構築的に問い直す。村山富市元首相の1995年の日本軍の戦争犯罪を認めた戦後50年談話や、ヴィシー政府の戦争中のユダヤ人狩りという犯罪的行為を認めたシラク元大統領の発言などを具体的に論じながら、現代の政治的な嘘をアクチュアルに考察する味読すべき小著。

【読者の皆様へのお知らせ】
ジャック・デリダ『嘘の歴史 序説』の日本語訳には以下の「訳者あとがき」が用意されていましたが、ガリレ出版社の意向により、掲載が認められませんでした。ここに掲載しておきます。

   *

訳者あとがき

本書は、Jacques Derrida, Histoire du mensonge. Prolegomenes, Galilee, 2012の全訳である。翻訳に際しては、ペギー・カムフによる英語訳も参照した(“History of Lie”, Without Alibi, Stanford University Press, 2002)。
 本書は、デリダが一九九七年にパリの国際哲学コレージュで実施した講演で、一九九四─九五年に社会科学高等研究院で講じられたセミネール「責任の問いIV――証言」からの短縮版となっている。
 嘘に歴史はあるのだろうか。時代や文化によって相異なる、嘘の概念の歴史とは何だろうか。嘘の主体とは誰だろうか、誰がその受取人であり、その犠牲者だろうか――デリダは、プラトン、アリストテレス、聖アウグスティヌス、モンテーニュ、ルソー、カント、ニーチェ、ハイデガー、フロイトといった嘘論の系譜を援用しつつ、アーレントの「真理と政治」「政治における嘘」、コイレの『嘘についての省察』を丹念に読解していく。
 伝統的な規定によれば、嘘とは、心のなかに抱いていることとは別のことを言葉などの表現手段で意図的に表明し、他人に害を与える、不誠実な言述や表現である。本当だと信じて誠実な気持ちで発言するならば、それは嘘ではなく誤謬となる。嘘の規定においては、発話内容と事実との一致という真実よりも、発話主体の誠実な意図が重要な基準となる。デリダは、真実を知っている自分が他人に嘘をつくという自己現前の自明性を疑問視し、自己への嘘はいかにして生じうるのかと問いつつ、誠実さと嘘の閾【しきい】に対して脱構築的な考察を仕掛けるのである。
 Iでは、政治的な嘘の事例として、村山富市首相の談話が赦しの告白と約束として評価され、フランスの歴代大統領がヴィシー政権下のユダヤ人迫害の罪に対して嘘を重ねてきた経緯が参照される。IIでは、トニー・ジャットの新聞記事の間違いを批判しつつ、現代において資本主義的-技術的-メディア的な勢力が真理に反する主張をいかに真理に仕立て上げるかが分析される。IIIでは、コイレとアーレントの嘘論が検討され、嘘が蔓延して白昼の陰謀と化した社会における秘密への権利、証言や証明といった問題系の重要性、安定した不動の真理への楽観主義的な信頼などが議論の俎上に載せられる。
 嘘をめぐるさまざまな哲学的主題が網羅され、現代の政治的な嘘の考察がアクチュアルな仕方で展開される本書は、小著ながらも味読に値する一書として、私たちに差し宛てられている。
 未來社・社主である西谷能英氏には的確かつ迅速な編集作業でお世話になった。厚く御礼申し上げる次第である。

   二〇一六年一〇月九日 西山雄二

著者略歴

●ジャック・デリダJacques Derrida
一九三〇─二〇〇四年、アルジェリア生まれ。「脱構築」を提唱したことで世界的に知られる哲学者。
高等師範学校などの講師を経て、社会科学高等研究院で教鞭を執った。
著書に『エクリチュールと差異』『グラマトロジーについて』『声と現象』『哲学の余白』『散種』『弔鐘』『絵画における真理』『絵葉書』『プシュケー』『哲学への権利』『マルクスの亡霊たち』『有限責任会社』『法の力』『友愛のポリティックス』『死を与える』『ならず者たち』『動物を追う、ゆえに私は〈動物で〉ある』など多数。未來社より『エコノミメーシス』『コーラ』『パッション』『名を救う』『信と知』『滞留』『赦すこと』『最後のユダヤ人』『嘘の歴史 序説』の日本語訳が刊行されている。現在、『獣と主権者』『死刑』『ハイデガー 存在の問いと歴史』など、講義録シリーズが順次刊行されている。

■訳者略歴
●西山雄二(にしやま・ゆうじ)
一九七一年生、愛媛県生まれ。
神戸市外国語大学を卒業、一橋大学言語社会研究科博士課程を修了、東京大学大学院総合文化研究科特任講師(「共生のための国際哲学教育研究センター(UTCP)」所属)を経て、現在、首都大学東京准教授。
フランス思想専攻。
著書に『異議申し立てとしての文学』(御茶の水書房)、『哲学への権利』(勁草書房)、Imagining an Abandoned Land, Listening to the Departed after Fukushima (Lambert)。編著に、『哲学と大学』(未來社)、『人文学と制度』(未來社)、『カタストロフィと人文学』(勁草書房)、『終わりなきデリダ』(法政大学出版局)ほか。訳書に、ジャック・デリダ『獣と主権者』(全二巻、共訳、白水社)、『哲学への権利』(全二巻、共訳、みすず書房)、『条件なき大学』(月曜社)、『名を救う』(共訳、未來社)、エマニュエル・レヴィナス『倫理と無限』(筑摩書房)、カトリーヌ・マラブー『ヘーゲルの未来』(未來社)、モーリス・ブランショ『ブランショ政治論集1958-1993』(共訳、月曜社)ほか。