木の文化の形成
日本の山野利用と木器の文化
ISBN:978-4-624-20079-4
発行日:2010年2月25日
判型:A5判上製
ページ:380
Cコード:0039
須藤護 著
山に生きる人びとの暮らしと知恵、木地挽の技、木器が活かされてきた歴史等、多岐にわたる項目を丁寧に取り上げ古代から現代までの流れを結ぶ。貴重な写真・図版多数収載。
はじめに
一 木の文化形成の条件
二 「木の文化」と「木の文明」
第一章 基層文化を育んだ日本の山野
一 日本の山林
二 樹木の認識とその活用
(一)落葉広葉樹林と照葉樹林の雑木
(二)奈良県野迫川村における樹木利用
三 里山の利用と約束ごと(福島県南会津郡の事例)
(一)里山のムラの一年
春木切り/放牧と焼畑/山の口あけ/杓子打ち
(二)ムラの憲法
春の寄合い/共有山の草刈り/伐採してはならない木
四 木工に依存してきたムラ
(一)福島県南会津郡桧枝岐村
桧枝岐の出作り/出小屋とムコウジロ小屋/ムラの生産領域/木製品の種類と流通/木製品の生産と食糧生産
(二)群馬県吾妻郡六合村
六合村の産物/畑作の知恵/木製品の製造/木炭の製造
(三)秋山郷(新潟県・長野県)
鈴木牧之と秋山郷/近世秋山郷のムラの様子/ムラの成り立ち/鈴木牧之の指摘/秋山郷の木製品/杓子とコスキ/山田清蔵日記
(四)石川県石川郡白峰村
定着型民家と出作り型民家/白峰村の木製品/木製品の出荷
(五)奈良県吉野郡大塔村・野迫川村
焼畑と造林/大塔村のつぼ杓子/野迫川村の箸/木工の伝統
第二章 木地挽の活動
一 丸物木地を挽く工人
木地挽の移住の過程/保城木地の仲間/そのほかの木地挽集団/山林使用の取決め/木地物の流通/氏子狩による木地挽の足跡/木地挽と漆器
二 板物木地のムラ
板物木地の問題点/伊勢の杓子木地の定着/農村向けの製品
第三章 木を扱う知恵と技
一 山に生きる人びと
(一)木を扱ってきた職人たち
樵(キコリ)・山人(ヤマウド)・杣(ソマ)/元山(モトヤマ)・山師・先山(サキヤマ)/木挽
(二)伐木と造材
移動する人びと/山小屋/山の儀礼/伐木
(三)木材の搬出・運材
木材の搬出
二 『木曽式伐木運材図絵』『吉野林業全書』にみる搬出と運材
(一)木曽式運材法
桟手(サデ)/ウス/スリボウ/ツリキ/小谷狩り/ヤナ・シュラ・トイ/大川狩り
(二)吉野式運材法
滑板・シュラ/タンバシュラ・ナル・ハゼ・柴桟手/ウス・ノレン/木馬(キンマ)出し/そのほかの運材法/管流しの仕様/筏による流送
三 甲賀木挽の知恵と技
(一)木を挽くということ
玉切り/ホンキとヨコキ/木を挽くということ
(二)建築用材の製材
柱材を取る/板材を取る/木挽と大工
(三)鋸の手入れ
前挽鋸/目立て/焼きを入れる
第四章 人びとの暮らしを変えた木製品──漆器と業務用桶・樽
一 木地物と漆器の普及
(一)安価で堅牢な椀の誕生
渋下地の椀/渋下地の工程/中世遺跡にみる漆器
(二)伝承されてきた古い椀
浄法寺椀・正法寺椀・根来塗/合鹿椀(ゴウロクワン)/日野椀と秀平椀
(三)素朴な漆器の流通
木地挽の漆椀
(四)近世における人びとの暮らしと漆器の流通
『会津風土記・風俗帳』にみる人びとの暮し
(五)漆器の普及と椀講
東北地方の「ワンコムジン(椀無尽)」/輪島塗の流通/庶民の漆器
二 吉野林業と桶・樽
(一)吉野林業の特性
(二)吉野造林法
種子の採取と選定/播種(ハシュ)と苗木仕立て/地あけ/山地への植付け/スギの畑
(三)吉野林業の発想と知恵
(四)大桶をたてる
クレ(側板)のこしらい/大桶をたてる
(五)桶と樽のちがい
(六)樽丸の製造
山での作業/小屋での作業
三 空になった酒樽のゆくえと関東の醤油業
(一)近畿圏をひかえた吉野の立地
江戸積みの酒樽
(二)江戸に残った空樽の再利用
江戸に残った空樽/紀州の出稼ぎ漁/干鰯の流通と綿作/関東における醤油の創設
第五章 日本における木の文化の特性
一 木の文化形成の基盤
(一)木の文化を成り立たせた知恵と技術の伝承
知識と技術の獲得/技術の伝承/目に見えない設計図/身近であった木材加工の技術
(二)縄文時代の自然活用
自然環境の変化/自然活用の知恵/縄文時代の漆と製品
(三)縄文文化の継承と変容
樹木の選定
(四)縄文・弥生時代の木造構築物
縄文時代の大型建物/弥生時代の建物遺構
二 日本における木の文化の特性
(一)鉄器の選択
青銅器と鉄器/鉄資源への関心
(二)弥生時代の鉄器
(三)古墳時代の鉄器
鉄斧・楔/手斧(チョウナ)・ 〓(ヤリガンナ)/細部加工用具
(四)木造建築へのこだわり
頻繁に行なわれた木造建築の建替え/木材需要の増加
三 外来技術の獲得と継承
四 おわりに――山野の文化再考
(一)樹木への気配り
(二)祭りによる山の再認識と価値観の継承
(三)山野の再評価
あとがきにかえて