日独ヴェーバー論争
『経済と社会』(旧稿)全篇の読解による比較歴史社会学の再構築に向けて
折原浩 著
マックス・ヴェーバーの遺稿にして代表作『経済と社会』は、第一次大戦前に執筆された「旧稿」と、戦後に改訂を施された「新稿」とが、ヴェーバー死後に合成編集されて成った書である。そのうちでも「旧稿」は、概念上で落差が存在する「新稿」の概念定義に基づいて誤って読解されるなど、精確に読まれてきたとは言いがたい状況にある。
著者はとくに、近年の『マックス・ヴェーバー全集』編集陣(モムゼン、シュルフター)に批判の眼を向け、彼らが杜撰な編集方針で「旧稿」を『全集』に配置・収録したことを明らかにするとともに、著者の研究成果をふまえて、「範疇論文」(邦訳『理解社会学のカテゴリー』)の概念定義にしたがった「旧稿」の読解案を展開していく。
はじめに
第一章 先行編纂の根本問題――基礎範疇にかかわる術語変更の無視
第二章 論争の争点――「旧稿」の基礎範疇
第三章 基礎範疇は、いつ、どこで、定立されたか――「作品史」論争
第四章 モムゼン批判(1)――「範疇論文」をどう読んだか
第五章 モムゼン批判(2)―― <ゲゼルシャフト行為> の第一、第二用例、併せてⅠ「概念」篇(ト ルソの頭)の内容構成
第六章 モムゼン批判(3)―― <ゲゼルシャフト行為> の第三、第四用例、併せてⅡ「社会」篇の内 容構成
第七章 モムゼン批判(4)――「トルソの頭」の解体
第八章 モムゼン批判(5)――「一九一四年構成表」の否認から 羅針盤なしの漂流へ
第九章 モムゼン批判(6)――「都市」は「『支配』に紛れ込んだ異物」か、併せてⅢ「支配」篇の内 容構成
第十章 モムゼン批判(7)――「執筆期順」編纂方針は成り立つか
第十一章 シュルフターのモムゼン批判――陣内論争の限界
第十二章 シュルフター批判(1)――「支配」篇への基礎範疇の適用と前出参照指示による「範疇 論文」への架橋
第十三章 シュルフター批判(2)――「宗教」章の <ゲマインデ> 概念と、分散諸用例との基礎範疇 による統合
第十四章 シュルフター批判(3)――基礎範疇の適用頻度は、執筆期でなく、適用される対象の特 性に依存
終章 編纂史の総括と今後の課題
注
あとがき
索引
折原浩(おりはら ひろし)
1935年生まれ。東京大学名誉教授。ヴェーバー学、社会学、学問論。著書に『ヴェーバー『経済と社会』の再構成』(東京大学出版会)、『マックス・ヴェーバーにとって社会学とは何か』(勁草書房)、『大学の頽廃の淵にて』(筑摩書房)、『東大闘争と原発事故』(緑風出版)、『危機における人間と学問』『マックス・ウェーバー基礎研究序説』『ヴェーバー学のすすめ』『学問の未来』『ヴェーバー学の未来』『大衆化する大学院』(以上、未來社)など多数。
『経済と社会』再構成論の新展開
ヴェーバー研究の非神話化と『全集』版のゆくえ
ヴォルフガング・シュルフター 折原浩 著 / 鈴木宗徳 山口宏 訳
定価: 本体2,800円+税 ISBN: 978-4-624-40051-4 発行日: 2000年11月30日