注目の本

蒲原有明詩抄

蒲原有明詩抄

蒲原有明

若くして象徴派詩人としての名声を得ながら、時代の流れのなかで自然主義派の批判によってゆえなき挫折を強いられたが、日本近代詩の立役者のひとりとして、その詩風は官能美と独自の律動感にあふれたものとして、近年あらためて再評価が著しい。一方で、作品の改竄も多く、せっかくの名作も価値が損なわれてしまうという問題もある。本書は1928年(昭和三年)に有明自身が岩波文庫の『有明詩抄』として自選したアンソロジーの作品構成をそのまま流用し、その時点で改竄されていた多くの作品を詩集発表時の初稿に復元する。有明の詩を読みやすいかたちにすることによって、有明の真の評価を促すべく提供する。郷原宏氏による懇切な解説付き。

言語隠喩論

言語隠喩論

野沢啓

言語における隠喩的本質とはどういうものか。さまざまな哲学的・思想的知見を渉猟するなかから、詩人でもある著者が詩の実践をとおして言語の創造的本質である隠喩性を明らかにする。これまでのどんな隠喩論とも詩的言語の研究とも異なる、詩の創造的瞬間の現場への考察から言語そのものの構造をとらえようとする、これまで世界の誰も試みたことのない詩人による実践的言語論。藤井貞和氏も推奨の力作評論。

小説と映画の世紀

小説と映画の世紀

菅野昭正

文芸誌『すばる』に好評連載された同名タイトルの待望の単行本化。20世紀の主要な小説作品の映画化の代表的なカップリングを12組えらび、それぞれの小説と映画のシーンをつぶさに比較対照して分析する。フランス文学研究者であり文芸評論家としても知られる著者ならではの卓抜な視点と明快な論理で小説と映画それぞれの世界に照明をあてる。映画のシーンを髣髴とさせる懇切丁寧な説明で名作、名画を記憶から復元させる大著。

好評既刊

自己責任という暴力

自己責任という暴力


コロナ禍にみる日本という国の怖さ

齋藤雅俊

長いことテレビ報道の第一線で社会問題に対面しつづけた著者は、現在のコロナウイルスに見舞われた日本人の心理的対応のなかに隠された怖さを見出す。パリ支局長時代に経験したイラク人質事件に見られた日本人の「自己責任」という名の官民あげての暴力的なバッシングは、世界の目からは異常な日本人の心性として目に余るものと見られた。海外でそうした批判や疑問を身近に目撃した著者は、「同調圧力」「自粛警察」などのいまにいたるも変わることのない日本人の精神的な抑圧構造を見抜いている。日本人とは何かを根底から問う警世・警告の書。

遊撃とボーダー


沖縄・まつろわぬ群島の思想的地峡

仲里効

1972年の日本「復帰」以前の沖縄を出自として首都東京での1968年以降のニューレフトや在日沖縄人運動を独自の立場から闘い抜いた世代がその後の沖縄にもたらした思想とは何か。いま現在の沖縄のさまざまな思想的トポスを縦横に論じ、文学や映画にまで通達する思考のダイナミズムを展開する沖縄のアグレッシヴな論客が切り拓く沖縄の思考の現在。アジアともつながる地政的なポジションを駆使して、停滞するヤマトの思考の地平にゆさぶりをかける異貌の論理が挑みかかる。現代中国の思想史研究家・孫歌氏との往復書簡も収録。