注目の本

宮澤賢治

宮澤賢治


二度生まれの子

倉橋健一

1992年に刊行された幻の名著『抒情の深層――宮澤賢治と中原中也』(矢立出版)のうち宮澤賢治の部分を独立させ、あらたに関連文献を追加し、著者の長い「あとがきに代えて」とたかとう匡子氏による解説をくわえて復刊する。みずからの存在と書くことの意識をめぐって切迫する賢治の「修羅」とはいかなるものであったのか、妹トシの死をめぐる葛藤やさまざまな童話の分析など、コンパクトながら数多い賢治論のなかでも白眉の一冊。

ことばという戦慄

ことばという戦慄


言語隠喩論の詩的フィールドワーク

野沢啓

言語の本質的隠喩性、創造的世界開示性という言語の根源的問題を提起した『言語隠喩論』(2021年)の言語理論をベースに、そのさらなる理論展開を示すとともに、近現代詩という豊穣な言語世界を広く深く渉猟し、詩人たちとその言語生産の実相を新たな視点から解読する。これまでの詩人論、作品解釈の次元を超えた詩的言語の可能性を、言語そのものの構造と詩人の言語意識との格闘のなかに見出そうとする『言語隠喩論』応用篇。

独学の思想

独学の思想

上村忠男

イタリア思想史、学問論などを中心に欧米思想をあまねく渉猟する著者の知的活動を、その学問的出発点ともなった富山の山中でのフッサール「危機」書への取組みから東京外国語大学就任を経て、著作と翻訳にまたがる膨大な仕事へと展開する過程において、あらためて検証する。ヴィーコ、グラムシ、ギンズブルグ、アガンベンなどとの学的かかわりをつぶさに論じる。『季刊 未来』で19回に及んだ連載をまとめた著者の学問的自伝の総決算の書。

好評既刊

沖縄戦後世代の精神史

沖縄戦後世代の精神史

仲里効

「復帰」という名の併合から50年。そこから始まり、そこに還る”時のなかの時”と格闘した群像の声と傷を探訪する。50年かけて50年前と出会う、その思索の旅の記録はまた来たるべき言葉のための遍歴でもあった。沖縄戦後世代の鏡と窓、交差と越境、精神史にして思想の地図へと誘う。『季刊 未来』に10回にわたって連載された「残余の夢、夢の回流」をベースに再構成された最新の沖縄思想地図。

言語隠喩論

野沢啓

言語における隠喩的本質とはどういうものか。さまざまな哲学的・思想的知見を渉猟するなかから、詩人でもある著者が詩の実践をとおして言語の創造的本質である隠喩性を明らかにする。これまでのどんな隠喩論とも詩的言語の研究とも異なる、詩の創造的瞬間の現場への考察から言語そのものの構造をとらえようとする、これまで世界の誰も試みたことのない詩人による実践的言語論。藤井貞和氏も推奨の力作評論。